ビジネス・経済 2019.03月号

第35回 都心部の新規プレビルドは敬遠、中古こそ狙い目

都心部の新規プレビルドは敬遠、中古こそ狙い目

 CBRE(シービーリチャードエリス)は数年前から、バンコクの中古物件は非常に割安感があり、いつか中古物件の見直しが起こる、というコメントを出してきた。これには筆者も全く同感で、最初の著書の中でも、「バンコクの場合、新築志向が強すぎる。これでは理屈が通らないので、やがて市場の修正が起こり、ロケーションのいい中古物件が見直される」そして、「特に建設用地が払底した都心部BTS駅前などの希少な立地条件を満たす物件は、中古であってもやがてキャップコンプレッション(収益還元利回りの低下)が起こるので、こういった築浅中古物件にこそ投資妙味がある」と書いてきた。
 最近、CBREが興味深い調査結果を公表した。「新規プロジェクトの売出価格が高騰した結果、購入希望者は新築物件を敬遠し、割安なCBD(中心部ビジネス街)の中古物件で管理状態のいいものを選んで買い始めた」というのである。
このグラフは都心部一等地築浅中古の市場価格推移であるが、第3四半期までの9ヵ月間だけ見ても、昨年から価格上昇が大きくなっているのがわかる。実際、第4四半期に入るとこの中古物件需要はさらに増大したとのことでもある。

1979年にコンドミニアム法が成立以来、タイ人の大半はプレビルドを購入してきたので、中古物件はあまり人気がなかった。しかし、最近は新規で売り出されるプロジェクトと中古物件で相当な価格差が出てきたため、自己居住目的のタイ人購入者は、予算的に手が届かなくなった新築プレビルド物件よりも、既存の中古物件をターゲットにするようになってきたのである。すなわち、市場ではこれまでの新築志向が弱まり、同じ価格であればもっと広い中古物件の方を選ぶという需要の変化が起きているのだ。
 さらに、プラスプロパティ・リサーチからもこんなレポートが出た。

  • タイ人実需層の間では、都心部に住みたいという住宅需要が今も大きい。しかし、開発用地不足によりCBDやその周辺のマストランジット駅では新規供給が難しく、その需要を満たせる中古コンドミニアムの価格が上昇中である。
  • 特にスクムビット通り(ミッドタウンのアウタースクムビットを含む)の中古物件は、平均で年率10%のリターン(キャピタルゲインと賃貸利回りを合算したもの)が見込める。
  • ただし、ここ2、3年以内に売出されたプロジェクトについては、(売出価格がかなり高いので)竣工前の転売で儲けることは難しく、竣工後最低でも3年位は賃貸運用する必要がある。

 宅購入を始めるという実需層の市場拡大も始まる。中でも所得の多いアッパーミドルクラスにとって、価格が高騰した新築物件はもう購入できなくても、代わりに都心の中古市場が購入対象になってくると筆者は考えている。
 ただし、中古物件の中には新築に比べても遜色がないほどクオリティの高いのものから、施工やメンテナンス状態が最悪のものまでピンからキリである。従って、信頼できるブランド、手抜のない施工、しっかりした管理とメンテナンス、これから発展が確実な駅の選択、駅前の最高の立地条件、アッパーミドルクラスが買える価格帯で広めの1ベッドルームか2ベッドルーム…、といった投資クライテリア(判断基準)を満たす難しい物件選択が、中古物件の場合不可欠となる。


藤澤 慎二
前職はドイツ銀行の国際不動産投資ファンド、RREEFのシニア・アセットマネジャーで米国公認会計士。現在はバンコクに在住し、自身のブログ「バンコクコンドミニアム物語」(http://condostory.blog.jp)で、バンコクの不動産マーケット情報を発信している。

連絡先:087-481-9709
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