ビジネス・経済 2019.06月号

第38回 日系デベロッパー、強気一辺倒から逃げ腰へ!

日系デベロッパーに異変

 日本の機関投資家は総合不動産デベロッパー大手5社を、「ジショ、ミツイフ、スミフ、トーキュー、ノムラ!」とそのブランドに対する信頼を込めて語呂合わせのようにこう呼ぶ。そして、この大手5社の中でバンコクのコンドミニアム開発事業に積極的に参入しているのは、三菱地所、三井不動産、野村不動産の3社である。

 一方、日本のマンション供給で最大手の住友不動産は、金は出しても口は出すな、というタイのデベロッパーとのJVにはどうも馴染めないようで、実質的な決定権が持てないタイでの不動産開発には今のところ消極的だ。また、東急の場合、東急不動産でなく親会社の東急電鉄が参入しているが、彼らの事業目的は先行した大手3社と少し違っている。電鉄が得意とする田園調布のような地域開発、つまり、タイ語でいう“ネーウラープ”の低層住宅開発市場への進出が主たる目的であり、特にコンドミニアム開発で積極的に儲けたいということでもないようだ。それもあって、コンドミニアムでは最大手の一角、サンシリと提携したが、彼らの持つ面開発のノウハウはサンシリにとっても是非学びたいところであり、何でもいえる対等の提携関係と聞いている。

 同じ日系大手デベロッパー間でも背景にこういった違いがある中、実はコンドミニアム開発を主目的に続々とバンコクに進出してきた大手・中堅デベロッパーの事業姿勢に年初から異変が起こっている。筆者も本誌2月号で「今の新規コンドミニアム市場、待つも相場なり」と書いたが、今年の不動産市場は波乱が予想されることから、個人投資家に対して安易な投資に警鐘を鳴らしたつもりだったのだが、実はこれはデベロッパーサイドにとっても状況は同じだったということなのである。

完成在庫の積上りに戦々恐々の日系デベロッパー

 4ヵ月前に本誌で、急増中の中国人バイヤーへの市場依存に対し、将来その購入に制限がかけられたり、大量の解約が出た場合、タイの不動産市場は相当な打撃を受けると書いた。そして今、米中貿易戦争による景気悪化と中国政府による海外送金規制で、中国人のコンドミニアム購入が減り始めただけでなく、竣工引渡し前の解約が増加しつつある。

 また、4月から始まったタイ中央銀行のLTVレシオ(借入金/資産価値比率)規制による住宅ローン貸出の落ち込みは深刻で、政府住宅銀行(GHB)は第2四半期の貸出が昨年比で最悪30%も減ると危機感をつのらせている。つまり、バンコクの不動産市場に確実にボディブローが効いてきているのである。

 従って、バンコクでこれから竣工を迎えようとするコンドミニアムプロジェクトの内、一体何割が完成在庫になってしまうのかと日系各社も戦々恐々としている状態だ。これでは新規開発などやれるはずもなく、タイで1万ユニット以上もの開発を行ったと自慢していたはずの三菱地所や三井不動産でさえも最近は随分静かになったし、中堅デベロッパーを含め、大半が様子見というのが実情なのである。

 ただし、一部の日系デベロッパー、例えばセナと提携する阪急阪神不動産のように、今も新規開発に積極的なデベロッパーもある。彼らにはまた違った考えや戦略があるのだろうから、それが吉と出るか凶と出るかは、あと数年先にわかるはずだ。


藤澤 慎二
前職はドイツ銀行の国際不動産投資ファンド、RREEFのシニア・アセットマネジャーで米国公認会計士。現在はバンコクに在住し、自身のブログ「バンコクコンドミニアム物語」(http://condostory.blog.jp)で、バンコクの不動産マーケット情報を発信している。

連絡先:087-481-9709
bkk.condostory@gmail.com

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