タイ投資委員会(BOI)の投資恩典取得企業が活用するリースバックをはじめ、多くの在タイ日系企業がリース取引を活用しています。タイではリース取引に関して、会計上と税務上の処理が異なります。
今回は借り手側でどのように処理されているかを解説します。
ファイナンスリースとオペレーティングリース
日本と同様にタイでも会計上、リース取引はファイナンスリースとオペレーティングリースの二つに区分して処理を行います。
借り手側にとってファイナンスリースはお金を借りて資産を購入し、その資産を使いながら返済をしていく形となるため実質的に「売買取引」の性質を持ちます。そのためリース資産とリース債務を計上して減価償却する事により費用の認識を行います。
一方、オペレーティングリースは所有権の移転が無く、「賃貸借取引」としてリース料の支払い時に費用の認識を行います。
しかしタイ歳入局のルーリングは、ファイナンスリースかオペレーティングリースかに関わらず、税務上は支払ったリース料を課税所得算定上損金として扱う事としています。
つまりファイナンスリースの処理で会計上オンバランス(貸借対照表上自社の固定資産として計上)して減価償却を行っていたとしても、税務上は損益計算書に計上されている減価償却費は法人税申告書上損金とならず、オペレーティングリースと同様の処理で実際に支払ったリース料を損金として処理する事になります。
一定額以上は損金不算入に
タイの独特なリース会計処理として、実際に支払ったリース料が法人税法上の損金になるというルールがあるため、例えば高級乗用車のリースを活用した節税効果に関するご相談をいただく事があります。
ただタイの税法上、乗用車または10人乗り以下の車両は100万バーツを超える減価償却費部分は損金不算入となります。また、車両のリースに関しては月額3万6000バーツを超える部分は損金算入ができません。
リースバックを活用するBOI恩典取得企業などでは資産の減価償却期間とリース期間にずれが発生する場合、会計上と税務上の利益に差が生まれる事があるため、リースの対象とする取引や期間などを事前に専門家へ相談することをお勧めします。
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J Glocal Accounting Co., Ltd.
Managing Director坂田 竜一大学卒業後、証券化に特化した会計事務所勤務を経て2009年来タイ。大手日系会計事務所で5年間勤務し、日系金融機関ほか多くの日系企業の会計・税務・監査業務に従事する。2013年12月、J Glocal Accounting Co.,Ltd.を設立、タイと日本の会計・税務の専門家として日系企業へのサポートを行う。
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URL : www.jga.asia
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