2017.04月号

時事通信 特派員リポート

【トルコ】大統領の権限強化に王手=国民投票「ノー」に暗雲も(エルサレム支局 浅見麻衣)


トルコで4月16日、大統領に行政権を集中させる憲法改正案の賛否を問う国民投票が行われる。過半数が支持すれば、現行の議院内閣制から、エルドアン大統領が悲願としてきた「トルコ型大統領制」への移行が実現する。独裁制につながるとの懸念が高まっているが、昨夏のクーデター未遂後に発令された非常事態宣言下で「ノー」とは言えない雰囲気も漂っており、賛成派の優勢が予想される。

権限集中を「合法化」

トルコ国会(定数550)は1月下旬、エルドアン大統領が実権を握るイスラム系与党・公正発展党(AKP)が提出した、大統領権限の強化を柱とする改憲案を承認した。国民投票の実施には330人以上の賛成が必要だったが、AKP単独では届かなかったため、極右野党・民族主義者行動党(MHP)の協力を取り付けた。

この改憲案では、大統領を行政のトップと定め、副大統領職を新設、首相府は廃止する。閣僚や高官の任命、国会の解散、非常事態宣言の発出など広範な権限を大統領に与え、従来の象徴的な存在から名実ともに国政の実権を握る存在に変える。

改憲が成立すれば、議会選と大統領選が2019年11月に実施される予定。大統領の多選制限が改憲後に一度帳消し になれば、エルドアン大統領は29年までその座にとどまることができる。

イスラエルの駐トルコ代理大使を務めたアロン・リエル元外務次官は「エルドアン大統領は既に事実上の行政権を行使しており、国民投票はそれを合法化するための手続きにすぎない」と指摘。16年7月のクーデター未遂後、トルコ国民はもはやエルドアン大統領の排除を考えられなくなったといい、「むしろノーが過半数を得れば混乱状態に陥るだろう」と語った。

政権支持かテロ支持か


17日、トルコ南東部カフラマンマラシュ県で、改憲案への賛否を問う4月の国民投票に向けた集会を開き、支持者に手を振るエルドアン大統領=大統領府提供(AFP=時事)

「『ノー』という人々は7月15日のクーデター未遂の支持者だ」。エルドアン大統領は2月中旬、国民投票をめぐり、エルドアン政権を支持するか、テロ組織を支持するかだとの「二項対立」に持ち込んだ。

ロイター通信によれば、AKPによる世論調査の一つでは、改憲賛成派は50〜55%で、反対派と拮抗(きっこう)している。浮動票の獲得が勝敗を分ける鍵とされる中、保健省は急きょ、表紙に「ノー」と赤い文字で印刷された禁煙パンフレットを撤去。「(国民投票のパンフレットだと)誤解を招きかねない」というのが理由だ。

改憲反対派は、三権分立による「抑制と均衡」が失われ、トルコが民主主義でなくなるとの懸念を表明している。しかし、国民投票に「ノー」と投票するよう訴えるキャンペーンは簡単ではない。前出のリエル元イスラエル外務次官は、世俗派、クルド人、イスラム団体「ギュレン運動」支持者というエルドアン政権と対立する三つの勢力が、改憲に反対しつつも、立場の違いなどから団結できない点を指摘した。

政府によるメディアへの圧力も影響している。主要紙ヒュリエトは、国民投票で「ノー」に投じると述べたトルコのノー ベル賞作家オルハン・パムク氏のインタビュー記事の掲載を急きょ中止した。同じく「ノー」に投票すると宣言したテレビ番組の男性司会者も、番組降板に追い込まれた。

※この記事は時事通信社の提供によるものです。
(2017年2月28日記事)

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