2016.02月号

時事通信 特派員リポート

Vol.02 チャイナマネー大歓迎=拡張主義への警戒薄く―中東3大国(カイロ支局 吉岡 良)

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中国の習近平国家主席が19日から24日にかけ、中東の3大国サウジアラビア、エジプト、イランを相次いで訪問した。中国はインフラ開発の分野で巨額の投資を行う方針をアピールし、原油安などで経済的に苦境に置かれている3国はこれを大いに歓迎した。過激派台頭や宗派対立激化で苦難が続く中東では、欧米や日本などで懸念されている中国の拡張主義に対する警戒感は薄い。今後も一段と関係拡大が進んでいきそうな状況だ。

習主席「歴史的訪問」

「中国とは経済、軍事協力が、前例のない形で発展している」―。エジプトのメディアによると、シシ大統領は習主席訪問の際、両国関係の進展を手放しで称賛し、中国の関与拡大を歓迎した。
2011年以降、政情不安で揺れたエジプトにとって、経済再生は大きな課題。これまで、サウジなど湾岸諸国からの投資に支えられてきたが、最近の原油安などによる湾岸諸国の財政難で先細りが懸念されている。
こうした中、中国の積極的な投資拡大は魅力的に映る。エジプトには、東南アジア諸国が抱えるような中国の海洋進出に対する懸念もない。地元メディアも「歴史的な訪問」と強く歓迎。
カイロのホテルのロビーなどでは、習主席の訪問を報じる英字紙が無料で配られていた。一方、中国主席の欧米訪問では珍しくない「人権抑圧抗議デモ」は一切ない。
サウジでは、中国が原子炉建設で協力を進める合意などが取り交わされた。原油安で国家財政に大きな打撃を受けたサウジは「脱原油依存」を進めており、原発開発を重視している。
一方、イランは核合意履行を受けた欧米の経済制裁解除で国際社会からの投資を一気に呼び込もうとしており、中国に期待するところも大きい。ロウハニ大統領は習主席との会談で、欧米の制裁下でもイランとの関係を構築してきた中国に謝意を示し、訪問によって「両国関係の新たな一章が始まった」と語った。

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エジプトを訪れシシ大統領(右)と握手する習近平中国国家主席=1月21日、カイロ(AFP=時事)

存在感で日本圧倒

こうした中、習主席は21日のアラブ連盟での演説で、中東地域に対して、総額で550億ドル(約6兆4000億円)という巨額の融資や投資を実施する方針を表明した。
習主席は演説で「中東で現在起きている紛争や混乱は、人々の生活や尊厳といった開発に関する問題と結びついている」と指摘。中国の進出が「雇用創出にもつながる」と訴え、情勢改善のためにも経済発展が必要だと強調した。
中国は投資の一環としてイランで高速鉄道の整備を進める方針で、エジプトでも構想が浮上している。高速鉄道の輸出をめぐっては、アジア諸国で日本と中国が受注を競ってきたが、中東では中国の存在感が圧倒的だ。
中東地域で活動する日本の企業関係者からは「中東は東南アジアなどに比べて政情不安のリスクも高く、とても中国のように踏み込めない」との声が聞かれる。
※この記事は時事通信社の提供によるものです。

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