時事通信 特派員リポート

【中国】中国経済に一時的明るさ=年後半は再び減速局面(中国総局 野口陽介)

中国経済に明るさが見られる。1〜3月期の国内総生産(GDP)は物価変動の影響を除いた実質ベースで前年同期比6.9%増と6期ぶりの高い水準を記録した。下落傾向が続いた人民元相場も、今年に入ってから落ち着きを取り戻している。ただ、バブル気味の住宅市場に加え、景気対策のための公共事業に支えられているにすぎず、年末に向けて成長率がずるずると減速する見通しだ。

党大会へ景気支援

「1〜3月期の主要統計データは予想を上回り、通年の目標達成に向けて良好なスタートを切ることができた」。国家統計局の毛盛勇報道官は内外の報道陣が詰め掛けた記者会見で胸を張った。
中国にとって今年は特別な年だ。5年に1度の共産党大会が秋に開かれ、習近平党総書記(国家主席)が2期目に入る。経済が混乱して失業者が大量発生するような事態だけは避けなければならず、習氏は胸をなで下ろしているに違いない。


北京で高層ビルの建設が進む現場(EPA=時事)

市場関係者の間でサプライズだったのは、製造業の勢いを示す3月の鉱工業生産が予想以上に良かった点だ。前年同月比7.6%増と2014年12月(同7.9%増)以来2年3カ月ぶりの高い伸びを記録し、中国経済の復調ぶりを見せつけた。毛報道官は「価格変動の影響を考慮しない名目ベースで見れば2桁もの伸びだ」と強調した。

しかし、公共事業と住宅市場という景気を支える両輪のうち、住宅市場については既に政府が沈静化に乗り出している。住宅建設が減速すれば、セメント、鉄鋼、板ガラスといった素材産業が打撃を受け、鉱工業生産の下押し圧力となる。
1〜3月の不動産開発向け投資は前年同期比9.1%増と1〜2月の8.9%増から加速。住宅販売総額は20.2%増と大幅に伸びた。「住宅は必ず値上がりする」とのバブル神話は根強く、富裕層でなくとも住宅転売による投機を繰り返している状況で、習主席が「家は住むためにあり、投機の道具ではない」とバブル抑制を命じた。

対米関係が影

習主席が4月上旬のトランプ米大統領との首脳会談で合意した「100日計画」も不透明要因として影を落とす。中国は巨額の対米黒字を削減するよう迫られており、今後の米中協議の過程で、痛みを伴う改革を突き付けられる可能性もある。
米側によると、中国は牛肉とコメの市場開放に取り組むと確約したという。しかし、米側はそれだけでは満足せず、サービス分野での市場開放も要請した。もし中国が難色を示せば、トランプ政権は、高率関税で米市場から中国製品を締め出す「強硬カード」を再びちらつかせるとみられる。

こうした「トランプ要因」がなかったとしても、専門家の間では、17年の年間の成長率は政府目標と同じ6.5%前後、16年の6.7%を下回ると予想されている。党大会に向けた景気下支えで、17年前半はそこそこの成長率が維持されるものの、後半は住宅市場沈静化などを背景に成長が鈍化するのは間違いないといわれている。

※この記事は時事通信社の提供によるものです。
(2017年4月25日記事)

 

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