2016.11月号

時事通信 特派員リポート

時事通信 特派員リポート Vol. 11 【オーストラリア】豪資源長者は「和牛」がお好き=純血種を大量購入(シドニー支局 新井佳文)

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豪「WAGYUの父」デービッド・ブラックモア氏(本人提供)

オーストラリアの資源長者ジーナ・ラインハート氏は、豪州産牛肉「オージービーフ」事業を急速に強化している。中でも力を入れているのが、高値で売れる「WAGYU(和牛)」だ。巨大資本が本格参入したことで、海外市場で豪州産和牛の存在感が一層高まりそうだ。

個人資産1兆円

ラインハート氏の個人資産は推定117億豪ドル(約9240億円)。亡父から継承した鉄鉱石事業を成長させ、豪州屈指の大富豪となった。次の金脈として目を付けたのが、中国向けを中心に輸出拡大が見込める牛肉事業だ。中国では中間所得層拡大に伴い、ワインや牛肉消費量が膨らんでいる。豪中自由貿易協定(FTA)も発効し、追い風が吹く。
ラインハート氏は自身が率いるハンコック・プロスペクティング社を通じて過去2年に2億豪ドル(約160億円)以上を投じ、数カ所の牧場を買収、保有する牧場で飼育する牛の数は早くも10万頭を超えた。個人経営が多い日本の酪農家が規模で立ち向かうのは難しい。
買収対象には和牛飼育牧場も含まれていたが、アンガス牛と和牛を交配した牛が主体だった。ラインハート氏は付加価値を高めようと、今年10月、黒毛和牛の血統を100%引き継ぐ純血種を1500頭購入した。

「WAGYUの父」が提供

入手先は主に、豪州で「WAGYUの父」と呼ばれる酪農家デービッド・ブラックモア氏だ。同氏は1990年代、日本で「門外不出」とされていた和牛遺伝子を独自に入手。純血種を増やし、豪州が和牛生産大国に躍進する立役者になった。ブラックモア氏は和牛飼育だけでなく、純血種和牛の遺伝子販売も手掛けている。
ラインハート氏は、純血種を入手したことにより、「一段と高級な豪州産和牛の生産者になれる」と期待する。純血種を繁殖し、自身の牧場での比率を高めていく考えだ。
ラインハート氏は中国の不動産会社、上海中房置業と提携し、S・キッドマン社の巨大牧場にも名乗りを上げた。提示額は3億6500万豪ドル。キッドマン社の牧場群の総面積は10万平方キロと韓国の国土に匹敵する広さ。20万頭近い牛が飼育されている。獲得に成功すれば、同氏は「世界最大の牧場主」となる。
牛肉事業に商機をみているのは同氏だけでない。鉄鉱石大手フォーテスキューのアンドルー・フォレスト会長や複合企業セブン・グループのケリー・ストークス会長らも競うように牧場を買収している。

日本は霜降り偏重?

和牛の本場・日本は海外展開が遅れた。アジアなどの高級レストランで和牛を頼むと豪州産が提供されるのが実情だ。
ブラックモア氏は「霜降りなど肉質の面では日本産和牛におよばない」と認める。しかし、世界的に健康志向が高まる中、霜降り偏重の日本産は脂肪分が多すぎてステーキには不向きで、敬遠される恐れがあると指摘。「現地のニーズに合わせた肉質を作る必要がある」と勧めた。

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