ビジネス・経済 2020.02月号

【インドネシア】根付き始めた「日本の鉄道」= インドネシア、MRTに高評価(ジャカルタ支局 榊原 康益)

【インドネシア】根付き始めた「日本の鉄道」= インドネシア、MRTに高評価(ジャカルタ支局 榊原 康益)

 インドネシアの首都ジャカルタで大量高速鉄道(MRT)が開業してから3月で1年となる。「世界最悪」と言われた渋滞の緩和を狙い、計画から建設、運行までを日本の官民が全面支援したプロジェクト。開通区間がまだ16キロに限られることもあり、大渋滞の解消には程遠い。だが、遅延のない「日本の鉄道」は高く評価され、市民の生活に根付き始めた。

国家予算5%損失

 ジャカルタ首都圏の渋滞は2000年代初頭に始まったとされる。「郊外の工場まで往復し、1日8時間を車中で過ごした」。駐在員から、そんな悲鳴も出た。地元メディアによると、首都圏交通管理庁は17年末、交通渋滞による経済損失を百兆ルピア(約7775億円)と試算した。国家予算の約5%に相当する。

 国際協力機構(JICA)によると、ジャカルタ特別州の人口と面積は東京23区とほぼ同じだが、道路面積は東京の4割、鉄道の総延長は2割未満にとどまる。一方、自動車保有は東京を80万台、バイクは8百万台も上回る。道路や公共交通機関が少ない割に車やバイクの通勤者が多いため、大渋滞が生じている。

 渋滞解消を狙い、思い切った対策も講じられたが、めぼしい成果は出なかった。

 03年に導入された「朝夕の乗員規制」は、大通りの通行に3人以上の乗車を義務化。罰則も用意したが、乗員不足の車に同乗して報酬を得る商売が横行し、16年5月に廃止された。

 同7月には、ナンバープレートが奇数の自家用車は奇数日、偶数車は偶数日しか通行できない規制が始まった。だが、偽造プレートを付け替える「抜け道」が出現した。

定時運行への信頼

 昨年3月下旬に開業したMRTの第1期区間は、ジャカルタ中心部と南部の15・7キロを結ぶ。車だと1時間以上かかるが、30分間で移動できる。インドネシア初の地下鉄を含む路線でもあり、大きな注目を集めた。

 MRTの駅や列車は、記念撮影する人々であふれ、4月の乗客数は1日当たり7万9114人に上った。5月は反動で8%余り減ったものの、翌月からは増加傾向が続き、12月は同9万5060人に達した。デモや停電による影響を除けば、大きな遅延や輸送障害は起きていない。

 先月と今月、スティアブディ駅で利用客11人に聞いたところ、「昼食を取るため」を除いた10人が通勤で使用。このうち7人が「平日は毎日」使っていた。

 運賃は3千~1万4千ルピア(約24~112円)に設定。州政府の補助金で抑えられているものの、2千~35百ルピア(約16~28円)のバスより高い。しかし、取材した11人中8人は「高くない」「まあまあ」と、手頃な値段であると認識。残り3人は「バイクタクシーより安い」と答えた。

 利用する理由で最も多いのは、定時運行に対する信頼性だった。「時間通りに発着する」「渋滞に巻き込まれない」「早い」「めったにトラブルが生じない」といった声が聞かれた。

 インドネシアでは「遅刻」が日常茶飯事。ジョコ大統領2期目の就任式でさえ1時間遅れて始まった。あまり議論されないが、遅刻による経済損失も甚大なはずだ。

 MRTは、北に延伸する第2期事業も円借款で行われる。「日本の鉄道」が、渋滞だけでなく遅刻の解消にも影響を及ぼすか、注目される。

※この記事は時事通信社の提供によるものです(2020年1月14日掲載)。

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