時事通信 特派員リポート

【ベトナム】徐々に持ち直すベトナム経済 コロナの「新常態」下で成長模索(ハノイ支局 北川勝弘)

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世界各国に広がる新型コロナウイルスの影響。早い段階で感染拡大に歯止めをかけることに成功したベトナムも影響を免れることはなく、経済成長率は2%台に鈍化している。ただ、全国規模で実施された不要不急の外出制限をはじめとした厳格な措置が響いた4月~6月期に国内景気は底を打った。7月下旬からは中部で新型コロナ第2波が発生したが、全国的な影響は大きくならず、経済は緩やかな持ち直しを続けている。

回復は実感しづらく

7月~9月期の成長率は2.62%。統計総局のグエン・ティ・フオン長官は「新型コロナ流行がすべての社会・経済分野にマイナスの影響を及ぼしたが、プラス成長は維持された」と語る。政府の景気対策による効果などで、「社会・経済部門は、『新常態』の下で事業展開を進める状況に入りつつある」と分析する。

製造業は前年同期比3.86%増加した。グエン・スアン・フック首相が公共事業の執行を加速するよう指示したことなどから、建設業も5.67%伸びた。サービス業では、卸売・小売業などが6.04%増加し、物品の販売を中心とした個人消費の底堅さを裏付けた。半面、宿泊・飲食サービス(9.78%減)、運輸・倉庫(1.24%減)、不動産(0.27%減)などは振るわず、新型コロナの影響が残った。

10月に入ってもこうした傾向は続いた。鉱工業生産は全体で5.4%上昇し、中でも加工・製造業は8.3%伸びた。通信機器が17.3%上昇し、家電は49.5%の大幅なプラスだった。小売売上高は、新型コロナの影響が続く宿泊・飲食サービス、観光は依然として低迷したが、物品販売は好調さを保った。

プラス成長を維持し、経済が持ち直してきたとはいえ、経済が拡大するペースはこれまでの7%を大きく下回る。10月に発生した大雨による被害がどの程度影響するかは不明だが、フック首相は、今年が2%~3%、2016~20年は5.9%程度の成長率になると予測し、5年間で目標とした6.5%~7.0%の達成が難しいとの認識を示した。

ある飲食店のオーナーが浮かない表情で、「コロナ前に比べ、お客さんの入りは全然だ」と語るように、成長を実感しづらい状況となっている。

デジタル技術でチャンス模索

マスク着用や他人との一定の距離確保など、新型コロナの流行下で、市民の生活様式も変化しつつある。従来は、伝統的な市場をはじめとした実際の店舗を訪れて、食品、日用品を買い求める人が多かったが、不要不急の外出制限などを契機にインターネットでの買い物を積極的に利用する人が増えてきた。

外食に関しても、レストランに出向く代わりに自宅で宅配サービスを利用するケースが多くなったという話をよく聞く。

配車大手のグラブに加え、ゴージェク(旧ゴーベト)、フーディーなど自宅にいながら手軽に料理を注文できるスマートフォン用のアプリが続々と登場してきた。複合企業大手ビングループは不動産販売にデジタル技術を積極活用する方針を打ち出しており、多くの企業が新型コロナに伴う「新常態」で新たに生まれるビジネスチャンスを狙い試行錯誤している。

※この記事は時事通信社の提供によるものです(2020年11月4日)

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