カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行経済レポート 2018年6月号

この記事はPDFでダウンロードできます

ダウンロードができない場合は、お手数ですが matsuoka@mediator.co.th までご連絡ください。

※入力いただいたメールアドレス宛に、次回配信分から定期ニュースレターを自動でお送りしております(解除可能)

タイ経済・月間レポート(2018年6月号)

4月もタイ景気は引き続き拡大基調

► 2018年4月のタイ経済は順調な拡大基調になりました。輸出の好調が持続しているほか、内外需の拡大が製造部門の成長に貢献しました。民間消費も大半の部門で拡大しました。家庭の購買力は改善しましたが、まだ強い回復にはなっていません。一方で、民間投資は主に設備投資の増加により、大幅に上昇しました。

► 2018年5月の消費者物価の上昇率は、前年同月比1.49%上昇し、過去16 ヶ月で最高でした。燃油の小売価格が13ヶ月ぶりの高値をつけたことがインフレ率を押し上げました。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、同0.80%の上昇で、前月から伸びが加速しました。

► タイ経済全体の成長とともに生産部門及びインフラ投資が拡大し、2018年のタイ国内機械業界は拡大傾向にあります。民間・公共投資、民間・政府消費、輸出などの経済指標が上昇傾向にあり、生産能力増強を目的に各産業で機械設備に対する投資が行われています。また、各産業で要求される機械・同部品はデジタル製品が中心となり、精度や正確度を有するモデルとなる傾向にあります。

► カシコンリサーチセンターは2018年の国内機械市場の売上げを1.14兆~1.16兆バーツ、つまり2017年より3.5%上がると予測します。また、タイは産業機械、特に精密機械の輸入依存度が高いため、2018年の機械輸入は前年比5~10%拡大し、4660億~4880億バーツとなる見通しです。

2018年4月のタイ経済情報

タイ中央銀行が発表した2018年4月の重要な経済指標によると、タイ経済は順調に拡大を続けました。輸出の好調が持続しているほか、内外需の拡大が製造部門の成長に貢献しました。民間消費も大半の部門で拡大しました。

4月の民間消費は前年同月比5・8%上昇し、前月の同2・6%増から向上しました。非耐久財以外の全ての部門で上昇しました。家庭の購買力は改善しましたが、まだ強い回復にはなっていません。特に非農林水産業の被雇用者の所得が上向いています。

一方で、民間投資は前年同月比7・0%上昇しました。主に設備投資の増加によります。機械輸入が、特に通信、エネルギー、コンピュータ部門で拡大しているほか、国内機械販売額も増加しました。また、商用車販売台数も増加しています。

4月の輸出は、前年同月比14・6%上昇しました。貿易相手国の景気拡大に沿ったもので、ほぼ全ての商品分野で増え続けています。また、世界市場における石油価格の上昇も輸出価格を引き上げました。石油価格に連動して輸出価格が変動する製品群では石油製品、石油化学品、化学薬品の輸出額が増えました。

工業生産に関しては、前年同月比4・0%増となり、6ヵ月連続でプラス成長となりました。輸出と民間消費が順調に拡大した結果、工業生産は特に自動車、食品・飲料、化学品で拡大しました。

観光業では、外国人観光客数が前年同月比9・4%増の310 万人となり、前月に引き続き拡大しました。中国人とロシア人旅行者がけん引しました。イースター休暇が3月末だったため、ロシアを除いた欧州からの旅行者は減少しました。マレーシアからの観光客も同国における選挙の影響から伸びが鈍化しました。

2018年5月のタイのインフレ率

商務省が発表した2018年5月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比1・49%上昇し、過去16ヵ月で最高でした。燃油の小売価格が13ヵ月ぶりの高値をつけたことがインフレ率を押し上げました。

品目別にみると、非食品・飲料部門が前年同月比1・93%上昇しました。3ヵ月連続で伸びが加速しました。昨年9月の物品税制改正の影響を受け、たばこ・酒が同5・9%上昇しました。それに加え、運輸・通信のうち燃料石油も同9・9%上昇しました。一方で、食品・飲料部門は同0・74%上昇しました。米・粉製品の上昇率が2・0%となりました。調味料、肉・魚、卵・乳製品は下落したものの、非アルコール飲料が同1・40%上昇するなどそのほかはプラスでした。

一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0・80%の上昇で、前月から伸びが加速しました。

2018年6月の外為相場

6月は、米中貿易摩擦の再燃に加え、米連邦公開市場委員会(FOMC)、欧州中銀(ECB)理事会、日銀金融政策決定会合と、重要イベントが集中していました。FOMCでは、今年2回目の利上げを決定しました。声明文も足元の景気に自信を示す内容で、緩やかな利上げペースが維持されることが予想されます。

ECB理事会では、資産購入を年内に終了する方針を決定しました。一方、日銀金融政策決定会合後の会見では、短期金利をマイナス0・1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和策の現状維持の決定が明らかにされました。市場の波乱要因が極めて限られる中、ドル円は今後も堅調に推移すると予想されます。

ただし、米国は15日、中国に対して500億ドル相当の関税引き上げを発表しました。これに対し、中国も直ちに報復措置を発表するなど、米中貿易戦争の様相を呈しています。米中貿易戦争が悪化する場合、円高が進行する可能性が高まっています。

2018年の機械・同部品市場の動向

タイ経済全体の成長とともに生産部門及びインフラ投資が拡大し、2018年のタイ国内機械業界は拡大傾向にあります。民間・公共投資、民間・政府消費、輸出などの経済指標が上昇傾向にあり、生産能力増強を目的に各産業で機械設備に対する投資が行われています。

タイ工業省工場局の統計によると、登録された2018年第1四半期の機械所有台数は2851台、前年比25・2%増加しました。当期で一番機械登録台数の多い産業はエレクトロニクス産業、次いで鉄鋼業(電化製品や自動車などに使用される鉄鋼製部品)、農業(米工場、粉砕機など)の順となっています。この順番は前年同期から変化しています。2017年第1四半期に機械登録台数の多い産業は、発電事業、プラスチック産業、鉄鋼業の順でした。また、各産業で要求される機械・同部品はデジタル製品が中心となり、精度や正確度などを有するモデルとなる傾向にあります。

注目点として、機械登録台数は2017年の1業者当たり5・4台から2018年の1業者当たり7・4台に増加しています。すなわち、各産業において事業の好調が継続することが確信されているため、機械投資が行われています。カシコンリサーチセンターは2018年の国内機械市場の売上を1・14兆~1・16兆バーツ、つまり2017年より3・5%上がると予測します。またタイは産業機械、特に精密機械の輸入依存度が高いため、2018年の機械輸入は前年比5~10%拡大し、4660億~4880億バーツとなる見通しです。

タイの2018年の機械・同部品市場の傾向に関する詳細を下記にまとめました。

産業機械:短期・長期の使用要求に応じることから新機械の需要が増える見込みです。特に生産能力の80%以上を使用している産業は短期的に新機械導入の必要性があります。産業機械の購入が予想される主要事業は順番に:①食品製造業及び農産加工業 ②包装・印刷事業 ③建設事業です。

農業機械:数年前のタイは天候不順の影響で水管理関連機械の需要が高くなっていましたが、今年は天候が平年並みとなったため、求められる農業機械の種類が異なってます。具体的には:①脱穀機と二輪駆動トラクター ②サトウキビカッター ③大規模農作業向けの農業機械(タイ政府が農家の大型機械使用を支援している)です。

機械工具:電気製品、エレクトロニクス、パッケージングなどの関連産業が回復傾向にあるとともに、今年は金属やプラスチックに関する産業において機械工具の需要が高まると見込まれます。さらに、自動車・同部品産業においても機械工具が必要とされつつあります。需要の高い重要機械工具は順番に: ① 成形機 ②技術関連機械 ③建設業用の金属圧延機です。

本資料は情報提供を唯一の目的としており、ビジネスの判断材料とするものではありません。掲載されている分析・予測等は、資料制作時点のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。また、予測の妥当性や正確性が保証されるものでもありませんし、商業ないし何らかの行動の為に採用することから発生した損害の責任を取れるものでもありません。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自でご判断ください。

この記事はPDFでダウンロードできます

ダウンロードができない場合は、お手数ですが matsuoka@mediator.co.th までご連絡ください。

※入力いただいたメールアドレス宛に、次回配信分から定期ニュースレターを自動でお送りしております(解除可能)

gototop