カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行経済レポート 2018年9月号

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タイ経済・月間レポート(2018年10月号)

内外需のけん引で8月のタイ景気も引き続き拡大基調

・2018年8月のタイ経済は引き続き拡大基調になりました。民間消費がほとんどの業種で 伸長したほか、輸出は減速傾向にあるものの成長しました。その結果、工業生産も連動して増加しました。民間投資と政府支出は増加基調が続いています。
・2018年9月の消費者物価の上昇率は、前年同月比1.33%上昇し、15ヵ月連続で上昇しました。その主な理由は、原油高の影響が一部製品の原料費や半製品の生産コストを押し上げていることによります。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は同0.80%の上昇で、前月から伸びが加速しました。
・2018年のタイ経済は内外需に支えられ、引き続き拡大基調を辿っています。しかしながら、2018年下半期の輸出と観光業の伸びは減速傾向にあります。輸出は比較ベースとなる前年同期の数値が高かったハイベース効果により減速する見通しです。観光業は南部プーケットで発生した中国人旅行者を乗せたボートの転覆事故の影響で、中国からの旅行者が減少傾向にあります。
・一方で、公共投資は引き続き拡大傾向にあるほか、民間消費は予想よりも改善傾向にあります。農業従事者の所得が増大傾向にあるほか、タイ政府は家計消費を高めるため、低所得者向けの支援策など購買意欲の喚起を行う政策を昨年に引き続き実施しています。従って、カシコンリサーチセンターは、2018年通年のタイGDP伸び率の見通しを従来予測である前年比4.5%増から、新たな予測の同4.6%増に上方修正しました。

2018年8月のタイ経済情報

タイ中央銀行が発表した2018年8月の重要な経済指標によると、タイ経済は景気の拡大基調が続いています。民間消費がほとんどの業種で伸長したほか、輸出は減速傾向にあるものの成長しました。その結果、工業生産も連動して増加しました。民間投資と政府支出は増加基調が続いています。

8月の民間消費は前年同月比4・1%上昇しました。ほぼ全ての支出カテゴリーで消費が増えています。農業部門と非農業部門の家計の購買力が回復していることや消費者信頼感の改善が寄与しています。例外は非耐久財で横ばいでした。比較ベースとなる前年同月の数値が高かったハイベース効果が一因です。前年は、物品税率の引き上げを前にしてアルコール飲料とたばこの買い溜めが生じていました。

一方で、民間投資は前年同月比6・3%上昇しました。国内の機械販売拡大による機械・機器向け投資、自動車への投資などがけん引しました。また、建設投資も前年同月比で上向きました。

8月の輸出は、前年同月比5・8%上昇しました。自動車・部品、石油関連製品、機械・機器、電気製品などが好調でした。自動車・部品では、乗用車と商用車がともに伸びたほか、タイヤとエアバッグが伸長しました。電子製品では、ハードディスク駆動装置(HDD)の輸出が設備増強の結果、拡大しました。

工業生産に関しては、前年同月比0・7%増となり、10ヵ月連続でプラス成長となりました。国内外の需要が順調に拡大した結果、工業生産は特に自動車、石油化学、および電子部門で拡大しました。

観光業では、外国人観光客数が前年同月比3・0%増の323万人となりました。7月上旬に南部プーケットで中国人が多数亡くなるボートの転覆事故が起きた影響で、中国からの旅行者が減少しました。ロシアからの旅行者は、米国の経済制裁による通貨ルーブルの下落により落ち込みました。長期休暇があったマレーシアからの旅行者が全体をけん引しました。

2018年9月のタイのインフレ率

商務省が発表した2018年9月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比1・33%上昇し、15ヵ月連続で上昇しました。その主な理由は、原油高の影響が一部製品の原料費や半製品の生産コストを押し上げていることによります。

品目別にみると、非食品・飲料部門が前年同月比1・90%上昇しました。昨年9月に物品税制が改正されてから5%台で推移していたたばこ・酒の上昇率は、前月の同5・86%から同3・86%に減速しました。運輸・通信も同3・86%上昇しました。

食品・飲料部門は同0・35%増となりました。米・粉製品の上昇率が4・48%増となりました。果物・野菜は下落したものの、非アルコール飲料が同1・88%上昇するなどそのほかはプラスでした。

一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0・80%の上昇で、前月から伸びが加速しました。

2018年10月の外為相場

ムニューシン米財務長官が、日本との通商交渉で通貨安誘導を阻止する「為替条項」を求める考えを示したことを受けて、円相場は10月15日、約1ヵ月ぶりの水準となる1米ドル=111円台まで円高・ドル安が進みました。

ここ数年の円安基調の背景には日米金利差の拡大があります。金融引締策を取る米国と緩和を継続する日本の方向性の違いが円売り・ドル買いの要因となっています。

米韓の自由貿易協定を例にとれば、為替条項は、①競争的な通貨切り下げを禁じる、②金融政策の透明性と説明責任を約束する、といった内容でした。同様の条項となれば、米国は日銀の強力な金融緩和に対しても注文をつけてくる可能性があります。金融市場では「為替条項」導入の可能性が高まるだけで、円売りを進めにくくなると予想されます。

2018年タイ経済成長率を4・6%増に上方修正

2018年前半のタイ経済は順調に拡大を続けました。輸出と観光業の好調が持続しているほか、国内需要の回復が鮮明になりつつあります。内外需の拡大が製造部門の成長に貢献しました。その結果、2018年前半のタイ経済成長率は前年同期比4・8%増となりました。

2018年後半のタイ経済に関しては、引き続き拡大基調にある見込みですが、拡大テンポは減速すると予想します。その主な理由は、輸出と観光業の伸びが減速傾向にあるためです。輸出は、比較ベースとなる前年同期の数値が高かったハイベース効果により、減速する見通しです。一方で、観光業は、南部プーケットで発生した中国人旅行者を乗せたボートの転覆事故の影響で、中国からの旅行者が減少傾向にあります。

2018年後半のタイ経済を押し上げるもう一つの要因は、公共投資です。タイ政府は、大型インフラ投資を通じて将来の経済発展を支える基盤とするほか、公共投資を経済成長を押し上げる景気対策の一つとして推進しています。2018年の主要な公共投資は、イエローライン・ピンクライン・オレンジラインの新電車路線などの国営企業関連大型交通インフラ整備があります。また、鉄道の複線化やスワンナプーム国際空港の第2期拡張事業などの現在進行中のプロジェクトもあります。

民間投資も公共投資拡大に追随して上向く見込みです。公共投資拡大および政府による民間投資の刺激措置により、投資家の信頼感が改善傾向に転じ、全体的な投資環境が改善すると予想します。

民間消費は、予想よりも改善傾向にあります。農業者の所得が増大傾向にあるほか、タイ政府は、家庭向け消費を高めるため、低所得者向けの支援策など購買意欲の喚起を行う政策を昨年に引き続き実施しています。カシコンリサーチセンターは、2018年通年の民間消費の伸び率の見通しを従来予測である前年比3・5%増から、新たな予測の同4・2%増に上方修正しました。

一方で、消費者物価も上昇傾向にある見込みです。世界原油価格の上昇傾向とともに交通費や電力料金などが上昇する見込みで、消費者物価の押し上げ要因となると予想します。

従って、カシコンリサーチセンターは、2018年通年のタイGDP伸び率の見通しを従来予測である前年比4・5%増から、新たな予測の同4・6%増に上方修正しました。

※本資料は情報提供を唯一の目的としており、ビジネスの判断材料とするものではありません。掲載されている分析・予測等は、資料制作時点のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。また、予測の妥当性や正確性が保証されるものでもありませんし、商業ないし何らかの行動の為に採用することから発生した損害の責任を取れるものでもありません。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自でご判断ください。

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