ビジネス・経済 2019.09月号

インテリジェンス・リレー連載  知らなきゃ損する タイビジネス法務 タイにおける店舗開発トラブル

はじめに


現在タイでは、小売業、飲食業を含む大小様々な「店舗」が立ち並んでいる。店舗を開店する前には、ビルオーナーとの間で賃貸借契約を交わし、内装工事を完了させ、備品を導入後商品搬入しなければならないが、それぞれの過程でトラブルがつきものになっているのが現実である。そこで、本コラムでは、これらのトラブルの一部を紹介するとともに、店舗開発にあたって法務的に注意すべき点を解説する。

オーナーとの賃貸借契約

 最初に生じる類型が、ビルオーナーとのトラブルである。店舗側とビルオーナーとは、賃貸借契約を取り交すのが一般的だが、この賃貸借契約は、日本ほど定型化されていない。この場面で気をつけておきたいのは、「中途解約した場合の扱い」である。店舗に限ったことではないが、事業上移転が必要になる時期と、契約満了期は必ずしも一致しないものである。この場合、賃借人である店舗側から、期間内の中途解約を申し入れることになるが、その際に「中途解約の場合は契約満了までの見込み賃料を一括して支払わなければならない」などという条項が入っていることがある。これが不合理な条項か否かは立地等にもよるため一概には評価できないが、少なくとも店舗側から見れば、移転の大きな障害になり得る。

 また、タイでは毎年のように賃料の値上げを要求されることがあるが、実は値上げに契約上の根拠がないことも多い。単に口頭確認で済ませてしまうのではなく、契約書の記載をよく確認しておくべきだろう。
内装工事におけるトラブル

 店舗開発におけるトラブルの典型事例は、内装工事の施工遅延である。タイの現地内装工事業者は、慣習上、契約書を作成しない場合が多い。そのため、見積書、メール、場合によってはLINEなどのやりとりによって、値段と工期を合意することになる。このように書面の取り交わしのプロセスを省略してしまう分、確かに初動はスピーディなのだが、初動が早いからといって、店舗完成まで早期にたどり着けるわけではない。

 内装工事業者によっては、遅れても気にしないと言わんばかりの対応もあり得るため、トラブルを予防する観点からも、遅延発生時の対応 (違約金や代金の減額等)について、できる限り書面で合意しておくことを心がけるべきである。

商業施設の施工遅延

 事業によっては、大型商業施設の一区画で店舗開発を行うこともあるが、この場合も遅延のトラブルは絶えない。例えば、店舗側の開店準備が整っているにも関わらず、商業施設自体が遅延のためにオープンせず、店舗側が打撃を受けてしまうというケースもある。この場合、商業施設本体の施工を管理しているのは、現地ディベロッパーであって店舗側ではないため、施工遅延を予防することは困難である。

 そのため、例えば契約書上で賃料発生時期を交渉しておくことや、商業施設側の施工状況を確認しながら、店舗開発する時期を遅めに設定するなど、スケジュールが大幅に遅延することを想定した計画立案が必要となろう。 


GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
代表弁護士  藤江大輔
2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

URL: https://gvalaw.jp/global/3361
Contact: info@gvathai.com

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