2019.12月号

知らなきゃ損する!タイビジネス法務

タイの商標制度(2)

インテリジェンス・リレー連載

はじめに

当職担当の回ではタイの知的財産権法について詳細に説明している。今回は8月号に続き、タイの商標制度について説明する。

1.商標の登録要件

タイの商標法においては、左記の登録要件を満たすものでないと商標登録を受けることができないとされている(6条)。
・識別力がある商標であること(7条)。
・商標法に基づき、禁止されていない商標であること(8条)。
・他人が登録した商標と同一、または類似する商標でないこと(13条)。

2.識別力がある商標

タイではアルファベット3文字の社名は商標登録を受けることができない、などと言われることがある。これは、タイにおいてこのようなアルファベット3文字の商標は識別力がないと判断される可能性が高い、ということから来ている。

商標の究極的な機能(存在意義)は、他人の商品と自分の商品を区別する機能(自他商品識別機能)である。したがって、そのような機能を発揮し得ない商標は登録にはならない。

例えば、指定商品「りんご」に対して、「アップル」という商標を記載して出願をしても登録になることはない。それは、「りんご」という商品に「アップル」と書いてあっても、単に「りんご」を英語で説明しているに過ぎず、誰の出所に係る「りんご」なのかという自他商品識別機能を発揮できないからである。

一方で、同じ「アップル」という名称でも、これを果物と全く関係ない「コンピュータ」等に使用する場合、識別力が生じるため登録になる。

また、極めて単純な商標(例えば、単に「A」の1文字だけを普通に記載した商標)も識別力を欠くため登録にはならない。この点、どこまでを「極めて単純な商標」(=識別力なし)と見なすかの判断基準は、国によって異なる。

例えば、日本においては原則としてアルファベット2文字以下であれば識別力なし、3文字以上であれば識別力あり、という運用が採用されている。

他方で、タイでは原則として、アルファベット3文字も識別力を欠く、という運用が採用されている。ただ、タイにおいてアルファベット3文字であっても全てが拒絶されるというわけではなく、ロゴと組み合わせたり、図案化する等の工夫を凝らすことによって、何らかの形で商標権を獲得できる場合もある。

この識別力に関しては、エアバス社が出願した「A380」という商標(現在世界最大の航空機であり、著名であると思われる商標である)についても、タイ知的財産局(DIP)は識別力がないとして拒絶査定を行っている。

この商標については、審判でも登録が認められなかったが、最高裁まで争った結果、消費者が識別できる商標であるとして登録が認められている。このように、DIPの判断は識別力がないとする判断を行う傾向があるため、審判や必要により訴訟による対応も視野に入れて出願戦略を検討することが必要となる。

3.商標法に基づき禁止されていない商標

商標法8条に、商標登録が受けられない商標が列挙されている。

王室や、政府の紋章、国旗、赤十字のマーク、公序良俗に反する標章などが規定されており、一部を除きこれらに類似する商標も登録を受けることができない。

日本国弁護士・弁理士 永田貴久プロフィール写真

TNY国際法律事務所
日本国弁護士・弁理士 永田貴久
京都工芸繊維大学物質工学科卒業、2006年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪、東京にて弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所を設立し代表社員に就任。16年にタイにてTNY Legal Co.,Ltd.を共同代表として設立。TNYグループのマレーシア、イスラエル、メキシコ各オフィスの共同代表も務める。

URL: http://www.tny-legal.com/
Contact: info@tny-legal.com

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