法務・会計・税務 2020.05月号

インテリジェンス・リレー連載  知らなきゃ損するタイビジネス法務 タイにおける減資の手法

インテリジェンス・リレー連載  知らなきゃ損するタイビジネス法務 タイにおける減資の手法

はじめに

3月号では、タイの非公開会社の増資の手法について紹介した。今回は資本の減少、すなわち減資について取り上げる。
株式に関する制度の違いから、タイの減資は日本のそれとは大きく異なるため、その方法をよく理解しておく必要がある。

タイにおける減資の特徴

タイにおける減資には、全株式の額面金額を一律に引き下げる方法と、会社の発行済株式数を減らす方法の2つがある。特に後者については、日本の制度と大きく異なるので注意が必要である。

日本における減資は、資本を減少させる手続きであって、株式数を減らす手続きではない。そのため、もし株式の数を減少させたい場合は、自己株式の取得・消却等の手続きを合わせて行う必要がある。

これに対してタイでは、株式会社による自己株式の取得は認められていない(民商法1143条)。他方で、減資の1つの方法として、発行済株式数を減少させることが認められており、これによって資本金を減少させるとともに、株式の数を減らすことができる。

タイにおける減資の手続き

減資を行うためには、株主総会の特別決議(75%以上の賛成による決議)が必要である(民商法1224条)。会社は、株主総会開催日の14日前に招集通知を発送して株主総会を開催し、更に決議日から14日以内に、減資が決議されたことを商務省に登記しなければならない (同法1228条)。

さらに、減資は資本の流出を伴うため、非公開会社が減資を行う場合は、いわゆる債権者保護手続きが必要である。具体的には、減資についての通知を少なくとも1回、新聞上で公告すると共に、会社の全債権者に対して文書で通知を行わなければならない。

通知を受けた債権者は、通知日から30日以内であれば、減資に対して異議を申し立てることができ、債権者から異議が申し立てられた場合、 会社は弁済を行うか、債権者に対して保証を提供する必要がある (民商法1226条)。

減資が利用される場面

タイにおいて減資が利用される場面の1つに、優先株(種類株)の内容を変更する場合がある。

タイの実務上、会社が優先株を発行することは珍しくないが、優先株に付加される権利内容を、事後的に変更するニーズが生じることもある(優先株を普通株に転換したい場合なども同様)。

しかし、タイの法律は、一度発行した優先株の内容変更を許容していない(民商法1142条)。そこで、優先株の内容変更を行う場合は、一度株式を減資した上で、再度増資の手続きを行う方法が採用されている。

この場合、減資については上述の債権者保護手続きが生じるため、手続き完了に時間的な差が生じる上、債権者が異議を申し立てた場合には、債務を弁済しなければならない。

日本との制度の違いを踏まえた上で、仮に全株主が同意していたとしても、その実行には煩雑な手続きが必要になることに留意しなければならない。

藤江大輔
GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
代表弁護士
藤江大輔

2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

URL : https://gvalaw.jp/global/3361
Contact : info@gvathai.com


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