2020.07月号

知らなきゃ損する!タイビジネス法務

タイにおける 民事訴訟手続の概要

知らなきゃ損する!タイビジネス法務

タイでの取引に関する紛争が生じた場合、日本と同様にまずは交渉によって解決を試みるのが一般的である。しかし交渉では解決に至らず、民事訴訟手続に頼らざるを得ない事がある。
民事訴訟手続について把握しておくことは、紛争が発展した場合はもちろん、交渉段階での紛争解決に向けた方針決定においても有益である。そこで本稿では、タイの民事訴訟手続(第一審)の概要について解説する。

タイの民事訴訟手続の特徴

日本と比較した場合、タイの民事訴訟手続の大きな特徴として、期日の少なさが挙げられる。

日本では期日の回数に決まりはなく、第一審における期日の回数は平均5回程度、証人尋問を実施した事件に限れば平均12回程度とされている (「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回)」最高裁判所)。

そして期日の度、原告又は被告が、自らの主張をまとめた書面を提出するのが一般的である。

タイの場合、期日は原則として第1回期日、証拠調べ期日、判決期日の3回である。そして原告と被告は、実質的には原告にとっては訴状、被告にとっては答弁書でしか主張する機会がない。

従って、その一度の機会でほぼ全ての主張をし尽くさなければならない。この期日の少なさ、そして、主張の機会が実質的に一度しかないことが、タイの裁判についてまず注意すべき点であろう。

実際には、この3回の期日の合間に和解交渉のための期日等が設けられ、3回を超えて期日が重ねられることも少なくないが、何度も期日が設けられ、その中で主張を積み重ねていく日本とは、根本的に考え方が異なるといえる。

判決までに要する期間

タイでは原則3回しか期日がないが、期日間が数ヵ月から半年程度空くこともあるため、判決までに1年から1年半程度を要することが多い。

もちろん、和解交渉のための期日が増えるほど長期化し、逆に、早期に和解に至った場合には半年程度で終わることもある。

また、タイには欠席判決という制度がないことにも注意しておくべきである。

日本では、被告が答弁書を提出せず第1回期日にも出廷しなかった場合(応訴しなかった場合)、通常、被告が原告の主張を認めたものとして、原告勝訴の判決が出される(欠席判決)。

一方、タイでは被告が応訴しなかった場合、被告は第1回期日における訴訟進行について権利放棄したものとみなされるが(民事訴訟法第200条第2項)、直ちに原告の主張を認めたものとまではみなされない。

その後、裁判所は、原告側のみの一方的な証拠調べを実施し、原告の主張が認められるか否かを判断して、判決を出す(同法第198条、第198条bis、第206条第1項)。それゆえ、タイではほぼ全件につき証拠調べが行われており、被告が応訴しない場合については日本より手間や時間を要することとなる。

タイにおいて、外国人(外国法人)だからという理由だけで訴訟上不利に扱われたりすることは筆者の知る限りない。しかし、上に述べた通り、タイの民事訴訟手続は日本と大きく異なる。その差異を十分に理解した上で、方針決定や訴訟の準備を進めることが重要である。

寄稿者プロフィール
  • 藤江 大輔 プロフィール写真
  • GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
    代表弁護士藤江 大輔

    2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所のパートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

    URL : https://gvalaw.jp/global/3361
    CONTACT : info@gvathai.com

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