2020.12月号

知らなきゃ損する!タイビジネス法務

タイの特許制度(2)

知らなきゃ損する!タイビジネス法務

当職担当の回ではタイの知的財産権法それぞれについて詳細に説明している。

10月号に引き続き、タイの特許制度について日本との相違点を中心に取り上げる。今回は新規性について解説する。

新規性について

原則として、発明は「新規」なものでなければ特許にならない(タイ特許法6条、日本特許法29条1項)。

これは、特許が新規発明の公開の代償として付与される(新しいアイデアを創作し、それを出願により公にすることで技術の発展に寄与することの対価)ことを理由とする。

そのため、発明の内容は出願が完了するまで公開しない(秘密にしておく)必要がある。

守秘義務を有しない者一人にでも発明の内容が知られてしまった場合、新規性を喪失したことになり、原則として特許を受けることができない。

この点は、基本的に世界の特許法に共通する重要な点であるため、是非とも覚えておいていただきたい。特許出願に関する相談において、「実は既に2年前くらいから他国で販売している」等と言われる場合があるが、このような場合は基本的にその技術に関する特許化は諦めてもらうほかない。

新規性喪失の例外① 意に反した喪失

しかし、種々の事情から出願前に新規性が失われてしまうことはままあり得るため、日本特許法・タイ特許法ともに、そのような場合に対処するための救済規定が設けられている。

新規性が喪失する場合としては大きく2つの類型が想定されており、各類型に応じて救済されるための要件が設定されている。

第1の類型は、出願人(特許を受ける権利を有する者)の「意に反して」新規性が喪失してしまう場合である。秘匿していた発明に関するデータが他人に盗まれ、勝手に公表されてしまう場合等がこれに該当する。

このような場合にまで、新規性喪失を理由に出願人が特許を取得する途を断たれてしまうのはさすがに酷であるため、新規性が喪失した後、一定期間内に出願すれば新規性が喪失しなかったものと取り扱う救済制度が設けられている。

この制度は、日本にもタイにも存在しているが、以前は救済が認められる期間に差が存在した。日本では新規性が喪失した時点から「6ヵ月以内」に出願をしないと救済を受けられず、一方でタイは新規性が喪失した時点から「1年以内」であれば救済を受けられるというものであった。

しかし、日本特許法の改正(日本特許法30条1項)により、日本でも「1年以内」であれば新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるようになった。

新規性喪失の例外② 発表による喪失

第2の類型は、出願人(特許を受ける権利を有する者)「自らが」発明の内容を他人に発表して新規性が喪失してしまう場合である。この類型で救済が認められる場面は、日本とタイとで大きく異なる。

タイの場合にこの規定による救済を受けることができるのは、発明者が当該発明を「国際博覧会や公的機関の博覧会」において発表した場合に限定されている(タイ特許法6条)。

一方で、日本においては「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して」新規性を喪失した場合に広く救済が認められており(日本特許法30条2項)、特に発表の場に限定が設けられていない。

かつては、日本特許法でもタイ特許法のように救済が認められる発表の場が限定されていたが、現在では「指定された博覧会等限定的な場面に限らず、出願前に様々な場所で発表して反応を見てから出願の決定をしたい」というニーズに柔軟に対応するために、例外が認められる場面が拡張されている。

なお、この類型の救済期間についても、日本・タイともに「1年以内」で共通している。

 

寄稿者プロフィール
  • 永田 貴久 プロフィール写真
  • TNY国際法律事務所
    日本国弁護士・弁理士
    永田 貴久

    京都工芸繊維大学物質工学科卒業、2006年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪、東京にて弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所を設立し代表社員に就任。16年にタイにてTNY Legal Co., Ltd.を共同代表として設立。TNYグループのマレーシア、イスラエル、メキシコ、エストニアの各オフィスの共同代表も務める。

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