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知的財産経営in東南アジア 「下町ロケット」のあのシーン、会社で起こったらどうしますか?【第7回】|Masuvalley

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技術は素晴らしいが、それと特許の良し悪しは別問題なんです【Part 3】

TBS系列で放映され、2015年の民放ドラマの最高視聴率を記録した「下町ロケット」。本コラムでは、このドラマのシーンを織り交ぜながら、東南アジア域内で中小企業でも起こり得る知的財産権問題を紹介します。

今回も前回に続き、ドラマの第二話で佃社長が初めて神谷弁護士と面談した際、神谷弁護士が「佃製作所の特許が良くなかった」と指摘したシーンについてお話したいと思います。
この時、神谷弁護士は「佃製作所がすでに取得している特許の見直しをやりましょう」と提案します。特許の見直しを行ったことで、佃製作所は“国内優先権”という複数のアイディアを包括できる法律テクニックを使い、第三話で出てくるロケットの燃料バルブをカバーする特許出願を、ロケット開発を行う大企業の帝国重工よりも先に出すことができました。
“国内優先権”とは、一度出願した内容に技術情報を追加して補足する方法で、異例の措置ではありますが、大企業の間では良く使われています。下町ロケットでは、佃製作所が神谷弁護士のアドバイスに従って特許の見直しを行い国内優先権を使い、3ヵ月というタッチの差で、帝国重工よりも先に出願していました。このような話は、実際に世界中で起きています。ほんの数ヵ月、場合によっては数週間、あるいは数日、早いか遅いかで発明の特許取得が決まってしまうのです。ドラマの中でも、帝国重工の開発を担当していた富山主任が「こういうリスクから逃れる術があるとすれば、他社よりも早く開発をするしかない」と上司に指摘されてがっかりしていたシーンがありましたね。
知的財産権に多くのコストを投下できない企業は特に、佃製作所が行ったように、すでに取得した特許の見直しを何度も行い国内優先権などの法律テクニックを使うことで、大企業よりも少しでも先行しての出願が非常に有効であると思います。これにより、ある領域においては大企業も国営企業も太刀打ちできない、自社のみのマーケットを確保できることになるのです。
(次回はArayZ10月号に掲載されます)

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執筆者:舛谷威志
東南アジア、日本、アメリカ、中国に拠点を持つMasuvalley and Partnerのオーナー兼パートナー。2004年にアメリカで起業した後、多国間にまたがる技術法務の現地事務所を各国に設立。現在、弁護士・弁理士は、日本人5名、アメリカ人5名、中国人・タイ人合わせて5名の、合計15名が所属。

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