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カンボジア、ラオス、ミャンマーの基本法制度比較⑰「M&A比較」

カンボジア、ラオス、ミャンマーの基本法制度比較⑰「M&A比較」

カンボジアにおけるM&Aのポイントと留意点

カンボジアにおけるM&Aに関して、株式譲渡スキームによるM&Aは、脱税や汚職等の不正リスクの問題もあり、実務的に多くの事例は存在していません。ただし、最近では通常の新規申請ではライセンス発行が認められない業種が健在しており(例えば、マイクロファイナンスやファイナンスリースに関するライセンスの発給が実質的に停止しています)、ライセンスを保有している会社の箱だけを買収するような事例も登場しています。

また、今までご紹介させていただいたミャンマーやラオスと同様に、最近では、一部事業譲渡を組み合わせた合弁での事業進出もありますが、カンボジアはアセアン域内においても強く外国投資を奨励するように設計されており、多くの分野で外資規制がなく、自由に投資することが可能となっています。そのため、ラオスやミャンマーと比べて、事業譲渡の場合は、合弁スキームが取られることは少なく、100%外国資本の新設法人を設立し、対象企業の事業のみを引き受けるケースが多い傾向にあります。

さらに、カンボジアでは、ほとんど外資規制を気にせず事業が行えますが、その結果、競争は激化し、撤退事例も増えています。また、最低賃金が年々上昇しており(2018年1月からは170米ドル)、製造系企業が撤退するケースが増加しているのも事実です。そのためサービス業、製造業問わず、撤退予定の会社を買収するようなM&Aの事例も登場し始めています。

カンボジアにおける株式譲渡や事業譲渡の留意点は、他国と比較してそこまで多くないと認識していますが、株式譲渡スキームの場合においては、ミャンマー、ラオスと比較してもカンボジアは汚職リスクが高いと評価されており、対象会社の汚職リスクの精査、検討を十分に行う必要があります。また、株式譲渡に基づいた登記変更手続きは過去に比べると簡易化されて迅速化していますが、それでもミャンマー、ラオスに比べて時間を要する傾向にありますので、スケジュールは比較的柔軟かつ余裕をもって設定する必要があります。特に、特別なライセンスの取得を目的に株式を引き受ける場合ライセンスによっては担当省庁で一定期間スクリーニングを受けることがあり、事前に当局と十分に協議し、事前合意をある程度得ておく必要があります。

また、株式譲渡契約や事業譲渡契約の締結に際しては、相手方が弁護士を起用するケース等は稀であり、国際的な英文契約書をどのように理解してもらうかという点について苦労することもあります。なお、ラオスと異なり、カンボジア国内での契約締結に際しては、カンボジア語に翻訳したり、公証手続きを行う必要はありませんので、比較的容易に締結が可能となっています。

 


One Asia Lawyersグループ ミャンマー事務所
藪本雄登
現地弁護士と協働し、タイを中心にタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM)の案件を担当。CLMへのクロスボーダー進出支援業務、M&A、労務、税務、紛争解決案件等を担当。ビエンチャン日本人商工会議所事務局長(2015年)、カンボジア日本人商工会労務委員(2014年、2015年)等を歴任。

One Asia Lawyers (旧JBL Mekong)
One Asia Lawyersは、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、シンガポール、マレーシア、東京、名古屋にオフィスを有しており、日本企業向けにASEAN地域でのシームレスな法務アドバイザリー業務を行っております。各事務所には、日本人弁護士・専門家が常駐しており、ASEAN地域に特化した進出法務、M&A、コーポレート・ガバナンス、労務、税務、知的財産、不動産、訴訟・仲裁対応などについて、現地法弁護士と連携の上、現地に根付いた最適なサービスを提供しております。
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