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CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)の解雇規制比較

CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)の解雇規制比較

2 ラオス

今回から、カンボジア、ラオス、ミャンマーに関する三ヵ国の 解雇規制の各論を述べていきます。まずは、ラオスの解雇規制について説明します。

(1)解雇理由

雇用者は、次の理由に基づく場合、雇用契約を解除することができます。

①被雇用者が特別な技術を欠く場合、または健康状態が悪く、医師の診断書を保有している状況において、かつ雇用者が当該被雇用者に対して、その能力および健康状態に応じた他のより適切な業務に就くことを許可したが、依然として役務を提供することができない場合。

②雇用者が、事業の向上を目的とした人員削減が必要と考え、組合、労働者代表または労働者の過半数との協議の後、労働管理局に報告を行った場合(労働法第82条)。 また、

③被雇用者が以下のいずれかの違反を犯した場合も、雇用者は当該被雇用者を解雇する権利を有します(同法第86条)。

(ア) 雇用者に故意に多⼤な損害を与えた場合
(イ) 雇用者からの警告にも関わらず雇用契約、または就業 規則を違反した場合
(ウ) 正当な理由なしに連続4⽇間以上の⽋勤をした場合
(エ) 裁判所の判決により禁固刑に処せられた場合
(オ) 他の被雇用者、特に女性の権利を侵害し、
すでに警告を受けていた場合

なお、判例の蓄積がないこともありますが、現在の実務においては、これらの正当事由を欠いても、解雇補償金を支払えば解雇可能と考えられています。

(2)事前通知

雇用者が無期雇用契約を解除する場合に、事前通知が必要となりますが、その期間については、肉体労働職と専門労働職により分かれています。肉体労働職の場合は、30日前まで、専門労働職の場合は、45日前までです(同法第80条)。

(3)解雇補償金

左記①、②の理由により解雇する場合は、直前の月給の10%相当額に勤続月を乗じた額を支払う必要があります(同法第90条1項)。

労働法第88条に定められた不当解雇に該当する場合は、月給の15%相当額に勤続月を乗じた額を支払う必要があります (同法第90条2項)。なお、当該不当解雇とは、次の通りです。

(ア) 十分な理由のない雇用契約の解除
(イ) 雇用者が直接的もしくは間接的に権力を乱用し雇用 契約を解除した場合、または被雇用者の基本的な権 利を侵害して被雇用者が業務を遂行できない状態に した場合。
(ウ) 雇用者が雇用契約に違反し、被雇用者もしくは被雇 用者代表から抗議を受けたにも関わらず、状況が解 決されないままであり、その結果として被雇用者に退職 を強要した場合。

なお、被雇用者に帰責事由が認められる場合(左記③)には、解約補償金を支払う必要はありません。

 


One Asia Lawyersグループ ミャンマー事務所
藪本雄登
現地弁護士と協働し、タイを中心にタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM)の案件を担当。CLMへのクロスボーダー進出支援業務、M&A、労務、税務、紛争解決案件等を担当。ビエンチャン日本人商工会議所事務局長(2015年)、カンボジア日本人商工会労務委員(2014年、2015年)等を歴任。

One Asia Lawyers (旧JBL Mekong)
One Asia Lawyersは、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、シンガポール、マレーシア、東京、名古屋にオフィスを有しており、日本企業向けにASEAN地域でのシームレスな法務アドバイザリー業務を行っております。各事務所には、日本人弁護士・専門家が常駐しており、ASEAN地域に特化した進出法務、M&A、コーポレート・ガバナンス、労務、税務、知的財産、不動産、訴訟・仲裁対応などについて、現地法弁護士と連携の上、現地に根付いた最適なサービスを提供しております。
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【One Asia Lawyersグループ タイオフィス】
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