2020.12月号

みずほ銀行メコン5課コラム

メコン5におけるM&A タイ編(前編)

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みずほ銀行バンコック支店メコン5課が発行する企業向け会報誌 『Mekong 5 Journal』よりメコン川周辺国の最新情報を一部抜粋紹介

メコン5におけるM&A タイ編(前編)

バンコック支店メコン5課 菅野祐太、Romrudee Assawaponganan 

タイは新型コロナウイルスの感染拡大が収束しており、社会は落ち着きを取り戻しつつある。一方で輸出と観光業などが大きなダメージを受け、経済はメコン5の中で最も落ち込んでおり株価も冴えない(図表1)。

こうした中で製造業を中心に投資を控える企業が多いが、一方で割安感のある企業や資産を買収しようとする動きも出ている。

タイはメコン5においても進出日系企業数が一番多く、地場企業の買収による進出・事業拡大も一定数存在する。消費市場として拡大を続けており、地場に根差した顧客・消費者網を持つ地場企業の買収は、一気呵成にタイ市場への進出・シェア拡大するチャンスとも言える。

本稿ではタイにおける日系企業のM&Aに焦点を当て、前編では過去と現状に関するトレンドを説明し、後編では検討時における主な留意点を説明する。

日系企業によるM&A件数

タイでのM&A件数は2014年~19年で年平均17件である(図表2)。

他のASEAN諸国と比較すると、シンガポール(同期間平均34件/年)、ベトナム(同期間平均22件/年)に次ぐ数字だが、日系企業の進出数はタイがASEANにおいて最大であることを踏まえると「意外と多くない」と言える。

なお、20年1月~6月には4件のM&Aが実行された。前年同期も4件であり、必ずしも大幅に減少しているとは言えない。もっとも、コロナ前から検討が進んでいたものが多いため、コロナ影響を踏まえたM&A市場の動向を判断するためには、7月以降の案件を見る必要がありそうだ。

日系企業による大型M&A案件

案件金額が公表されている中では、17年、18年に大型買収が集中している(図表3)。

記載のある大型案件のほとんどは既にタイに進出している日系企業による事業拡大を目的とする案件である。

最大の案件は18年のユニ・チャームによる地場衛生用品メーカーのDSG(Cayman)Ltdの買収であった。ユニ・チャームはタイ最大のシェアを有する衛生用品メーカーであるが、中低価格帯のブランドを保有するDSGを買収することにより、商品ラインナップを増やし、地位を磐石なものとしている。

また、東京海上ホールディングスによるSafety Insurance PCLの買収(18年)は現地の個人向け分野に対する事業拡大が目的であり、従来日系企業向けの販売が主体だった東京海上ホールディングスのビジネスポートフォリオ拡大に寄与している。

日系企業のM&Aの背景・目的

案件の背景や目的をまとめることにより、日系企業のタイにおけるM&Aの特徴を3点抽出した(図表4)。

コロナ禍におけるM&A動向

コロナ禍でもM&Aを継続して検討する企業は「コロナ禍でも堅調な業種」「コロナ禍でダメージを受けた業種」への投資の2パターンがある。

「コロナ禍でも堅調な業種」に関しては例として食品加工関連業界へのM&Aを検討するケースが多い。タイは農業・畜産業が盛んで世界有数の食品加工業の集積地となっており、コロナ禍においても食品需要が堅調であるため、改めてタイの優位性が見直されていることが背景にある。

「コロナ禍でダメージを受けた業種」に関しては、例としてホテル業が挙げられる。タイは観光立国でコロナ前までは既存ホテルの買収による市場参入を検討する企業が多かった。ただ、高架鉄道主要駅近隣のホテルはオーナーが手放そうとするケースは少なかった。

しかし足元では、流動性確保の観点から資産売却が増え、主要駅近隣のホテルでも売り案件が出ているようである。ただし、コロナ前の価格水準で売却しようとするオーナーと現状を踏まえた割安な価格で買収しようとする投資家の間で価格が折り合わないケースが多いようだ。

製造業に関しても一部の日系、外資系サプライヤーの撤退や事業縮小に伴う売却希望が増加。背景には受注の減少に伴う経営状態の悪化があるが、優良な工場設備や人員確保という観点から、こうした状況下でも規模を拡大している事業者にとっては買収の好機となる可能性がある。(続く)


みずほ銀行バンコック支店メコン5課

E-Mail : mekong5@mizuho-cb.com

98 Sathorn Square Office Tower 32nd-35th Floor, North Sathorn Road, Silom, Bangrak, Bangkok 10500 Thailand

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