2016.08月号

【連載第30回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

accounting portar tadano

ラカン社編(第1回) 「温められたチラシから」

【プロローグ】 今月からお送りするのは、トップとしての責任範囲が多岐に渡る現地Managing Director(以下、MD)を長らく任され、財務・経理がバックグラウンドではないがゆえに、日本本社の財務・経理のリクエスト対応に苦労されている方からの相談をベースにした物語である。 中堅企業はさることながら、コア人材を含めた現地化シフトにより、最近は大手上場企業でも当てはまることが多いストーリーであると思われ、現地MDへの賛歌となれるようなエピソードとなれば幸いである。

「いつ連絡しようかと、ずっと机の引き出しにしまっておいたんですよ、このチラシ」。 かつてはツアーガイドの仕事もしていたこともあるという空川さんは、バンコクでも定評のあるインド料理レストランで、当社に連絡をくれたきっかけを述懐してくれた。お互いが旅好きなこともあり、空川さんと食事をする時はバンコクにある世界の料理を食べ歩くことにしている。彼の旅における知見や洞察は深く、いつも感心が尽きない。
現在はバンコクから東にある工業団地で、車関係などパーツのちょっとした加工と販売を展開している日本企業のタイ現地法人の代表を任され、はや10年近く経つという。最近、本社からの財務・経理関係の要望が多く(※1)、その対応に苦慮していたある日、机の引き出しに温めていた我社のチラシを当てにしてくれたのだ。
「この前も本社経理スタッフがタイに来まして、あーでもない、こーでもないと口は出すものの、何の解決にも至らずに帰ってしまったんですよ」 ご多分に漏れず、空川さんも財務や経理の経験が少ない中、限られた現地のスタッフや自らのリソースを活用しながら 数字を上げていかなければならない。営業畑出身の空川さんからすれば、営業に注力して、財務・経理の仕事はなるべく後回しといきたいところなのだが、結局、説明責任も負うことが当然分かっているからこそ、ずっともどかしかったのがこの分野だという(※2)。
「本社が作りこんだデータベースのファイルと、外部委託先の会計会社との数字がいつも合わないままなんですよ。この前もずっとこの件について本社から追求されまして。でも、そも そもこのデータベースを作っているのは本社。システムの人にも来てもらったのですが、結局解決してないんですよね」(※3)。
そんなわけで、このデータベースのファイル上の数字と、会計上の財務諸表の数字の差異の内容と解決策を探るのが今回のミッションである。とにもかくにも、一度現場に入ってレ ビューしてみることにしたのであった。
(次号に続く)
※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の 変更等、脚色部分があります。

(※1) 会社の規模や性質にもよるものの、現地法人の経理管理については、海外事業関係の部門か経理部門直接かによることが多く、管轄部門が多岐に渡る場合もある。これは現地MDにとってはややこしい問題で、さらに現地法人のMDと本社との力関係が影響してくることも。このような背景の空気感も読みながら、現地法人の立場で、本社の要望もある程度満たす方策と して、第3者として、外部の会計事務所やコンサルタントを活用する意義は大きいと思う。
(※2) 説明責任として通常求められるのは、月次レベルでの実績内容説明だ。前月対比や前年同月対比などがオーソドックスなところだが、ある程度、予算との対比について説明が必要な場合も出てくるだろう。「本社の営業部門トップで管理数字も財務諸表を分かっている」という経験があれば別だろうが、数字に責任は負っていたものの、最後の財務諸表レベルでの分析は、経理部門が管轄している場合が結構多い。現地MDに就任された人で苦労される方が多いのはこのためだ。
(※3) 日本とタイで会計方針が大きく異なるという企業はあまりなく、通常、日本で考えられうる内容に沿って会計指針を決めた上で、本社主導で進めても問題はない。但し、管理会計など運営面となると、本社および現地法で連携を取らないと、相当大きなズレが生じるケースが 多く、特に原価配賦など原価把握面においては苦労させられることが多い。

 

 

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Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke),
Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表 : 日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadan@aporter.co.th
HP : http://aporter.co.th/

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但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

 

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