【連載第42回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

事例別に紹介する新シリーズ!
個人所得税編(7)「レッグ社の場合(前編)」

※本事例のレッグ社タイ法人は駐在員11名、スタッフ規模50名程度の加工および試験業者である。

「実は本社の税務調査で結構な追徴課税を受けちゃいまして…。帰任後に本社がタイでのグロスアップとして最終的に納付する額がありますよね?あれがいけなかったらしいです」。
レッグ社現地法人のManaging Director(MD)である大丘さんが、珍しく相談したいことがあるとやって来られた理由は、この件だった。当社が会計業務を受け始めてから2人目のタイ現地MDで、赴任3年目、切れ者でもあり人間性も豊か―前任のMD同様にお世話になっている大丘さんからの相談ということで、こちらに至らないことがあったのではと身構えながら耳を傾けた。

「調査官はどんな根拠を言ってきましたか?」当社としても初めての事態だったため、フォロー不足だったことも想定しながら身を乗り出して聞いた。
「向こうは、税法だか通達に示されているって言うんですよ」。

“向こう”とは日本の本社であれ税務署であれ、日本側全体を指すのであろう。大丘さんにとって外部から横槍を入れられた感は否めない。
日本側の税務事情や税務調査のサポートは流石にケア範囲外となるので、こちらも“向こう”という存在にしたいところだったが、タイの処理に起因するものであればやはり何だか気持ちが悪い。事前に分かっていれば防げたのではということもあり、今からでもできるサポートは何かないか、はやる気持ちを抑えつつさらに事情を聞いた。

「私も自分なりにインターネットとかで検索したんですけどね、やっぱり追徴課税対象になってしまうらしくて。今後は帰任時に全て本社負担分を清算したいのですが、そういう処理って可能ですかね?」

大丘さんは起きてしまったことは振り返らず、事実として冷静に捉えることのできる人だ。むしろ今後のことを踏まえて相談に来られていたのだ。そんな大丘さんの言う通り、日本の所得税法基本通達212-5の第二項が根拠であることも確認できた。

「ええ、可能です。PND93という帰任時に清算する方法を取ることができます。ただし、このPND93で清算しても、どのみち最終的には、年度末のPND91と呼ばれる個人の確定申告書の提出は必須となります」。
このPND93と呼ばれるタックスフォームは、タイで経理をしている人でもあまり聞き慣れないものだが、不思議なことに…。
(次回、中編に続く)


Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke), Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、
顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表 : 日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadano@aporter.co.th
http://aporter.co.th/


但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter
Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。
本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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