2016.07月号

【連載29回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

accounting porter

タールア社編(最終回) 「最後に残ったもの」

【前回までのあらすじ】 ~長らくタイに不在だった署名権者にようやく現地日本人が 登記され、アドミニストレーション業務も安定してきた矢先、設 立当初からのアドミンスタッフであったサリーさんが退職した。 その後、大した引継もされずに後任スタッフが入社したが…~

まるでデジャブだが、同じことが起きた。
現場を預かる井勃さんが取締役になり、権限委譲が柔軟に行われたのかと思いきや、単に登記上エントリーされただけで、会社としての実態はまったく変わっていなかったのだ。それに加えてサリーさんの後任で入ったジャスミンさんは事務業務に不慣れで、再び月次税金の納付遅延が繰り返されたのである。
度重なる納付遅延の合間を縫うかのように、本社との連結決算(※1)や、BOI企業としてのポジション申請の変更手続き(※2)などもあり、この中でもまたかなりのドタバタ劇があった。初めての対応ばかりでジャスミンさんも右往左往していたが、それでも、どうにかこうにか安定したきた矢先―。
「うちの井勃ですが、実はこの度退職することになりまして、代わりに古川を送ります」との連絡が本社からあった。古川さんは井勃さんよりも若く、タイには本社支援要員という立場で、以前から出張ベースでのサポートとして、度々タイの事務所に来ていたが、これを機に常駐に切り替わるという。
目まぐるしく動いた人事はこれだけではなかった。その数ヵ月後、増員採用ということで、新たな日本人スタッフの下川さんがタイに送り込まれてきた。さらには、なぜかタールア社とは全く関係のない新事業会社の代表になっていた、あの身体の大きな角さん(角さんはこの頃にはほとんど関与しなくなっていた)の会社にジャスミンさんが移籍。ジャスミンさんは外部受託という立場で、タールア社のアドミン業務の面倒を遠隔地からみている状況になっていた。最近では古川さんが本社帰任となり、下川さんが現地責任者に昇格した(※3)。
タールア社とのサポートを通じて得たもの。それはバックオフィスとして対応した業務のレパートリーの多さと、ギリギリのところでの対応だろう。
タールアとはタイ語で「船着場」だ。次々と到着する船により、船着場前の川面はいつも揺れている。それでもサポートする立場としては鍛えられたことに、冷静になった今は感謝の念がある。
( 次回から新編『ラカン社編』が始まります)
※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の 変更等、脚色部分があります。

(※1) 連結決算対応は、よほど事業規模が大きく、経理組織がタイ現地で内製化されていない限り、現地で日本本社との連結対応が完結する会社は稀有だろう。通常は本社の経理がサポートする形か、いわゆる連結パッケージと呼ばれる連結決算上必要となる会社独自に予め調整された表計算シートへの入力だけを外注するかのどちらかと思われる。これは単に、タイの現地法人に、そのための専門的知見を有する経理経験者が配置されていないためだ。外注先の会計士や、上場会社の経理経験者の中でも上級職でないと連結決算対応という経験について不足していることがある。
(※2) BOI企業であれば無制限に日本人を採用してよい訳ではなく、事前にどんな能力を持ち、どんな貢献をタイにもたらすことができるかなど、その内容に応じたポジションの人をどれだけ採用するかという、人員計画のようなものを事前に申請および受理してもらう必要がある。これには正当な理由が必要であることは意外と知られておらず、BOI取得後に苦労するケースも散見される。
(※3) 最近、日本人駐在員として本社からプロパー社員を送り込むパターン以外のケースに遭遇することが増えてきた。例えば現地採用ではなく、タイ現地法人での就業を前提に本社で採用し、ほぼ本社での就業経験を経ずに駐在員として送り込むようなケースである。これにはコスト負担感や人材不足といった背景があるものと思われるが、本社のDNAが受け継がれない点で、一長一短で良いことづくめということだけでもなさそうだ。

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Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke),
Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表 : 日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadan@aporter.co.th
http://aporter.co.th/

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但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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