【連載第41回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

事例別に紹介する新シリーズ!
個人所得税編(6) 「ラークマイ社の場合(後編)」

~百木さんは赴任2年目を終え、所得税申告で初年度とは異なる想像以上の追加納付負担を強いられることに。これを避けるため、日本の所得をタイで毎月合算申告納付するグロスアップ計算での算出を日本本社にこちらから説明することになったのだが…~

「百木さん、残念ながら本社としては次年度以降もグロスアップ計算ではなく、算出方法はこのままにしてほしいということでした。その代わり、前年度から増額した納税分は昇給と合わせて増額してくれるそうです」。

「え~!そうなんですか。まあそれだったら何とか奥さんも納得してくれるかな。でも今回分はどのみち捻出しないといけませんよね?」
完全に現場の要望が通ったわけでもなく、かといって全く通らなかったわけでもない、いわゆる日本式解決といったところだった。

ラークマイ社は3代目社長が牽引する歴史ある会社ではあるものの、大企業のように海外赴任者のケアをしてくれるような人事が充実しているわけではない。十把一絡げとまではいけないが、この規模の伝統的企業の対応としては標準的なもので、追加発生した現地での個人所得税は赴任者が自主的にリザーブして、その中からやりくりしてくれという結論だった。

この手の処理に慣れている会社では、日本でのみなし所得税を事前に算出し、そこから手取りベースでのグロスアップ計算をする、というのが一般的ではある。ただ、ラークマイ社は昇給毎に毎回グロスアップ計算はしてくれないが、海外赴任手当など何らかの手当名目でその分を補填はしてくれる。それは百木さんにとっても救いだった。

数日後、日本では桜が満開になる時期、「会社もちゃんと考えてくれているということで、奥さんには何とか矛を収めてもらいましたよ」と、百木さんの安堵の声が電話越しに届いた。こちらのモヤモヤしていたものも晴れたので、こう続けた。
「桜は見れませんが、次回バンコクにいらした時は是非ご一献しましょう」。
タイで最も暑いソンクラーンも明けたある日の晩。2人はスクンビット通りにある寿司屋で花見酒よろしくさくら白波で乾杯するのだった。
(次回、個人所得税編の続き、「レッグ社の場合」が始まります)

Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke), Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表:日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadano@aporter.co.th
http://aporter.co.th/


但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。
本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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