【連載第40回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

事例別に紹介する新シリーズ!
個人所得税編(5) 「ラークマイ社の場合(中編)」

~赴任2年目を終え、初年度同様の心持ちで所得税申告の説明を受けていた百木さん。ところが、想像を超える追加納付額を知ることになる。なおも説明は続き…~
※本事例のラークマイ社タイ法人は駐在員1名、スタッフ規模6名程度の部品卸売業である。

今回、所得税負担が増えた理由は、細かいところで言うと以下の事情があったからだ。
初年度においては、日本で受け取る賞与支給額がタイで合算すべき対象範囲とならない場合が多い。これは日本の賞与対象期間と、タイの賞与支給月のタイミングが数ヵ月ずれるのが一般的だからだ。
例えば、10月に赴任して12月に支給を受けた賞与の算定対象期間が決算年度の上半期(4月から9月)の場合、初年度に限っては日本で源泉所得申告(年末調整)され、タイでは合算せずに済ませる場合がある。

同じ問題は帰任時にも起きるが、赴任時ほど気を使わずに対応する会社のほうが多い。なぜなら、タイ当局からすればいくらかでも取れる部分があるのだが、帰任する側にすれば日本の当局との2重課税のリスクを排除できないこと。そもそも、算定期間後の支給基準日に在籍していないと支給対象にならない規定があったりするからだ。そのため、説明可能なレベルということで、帰任時にタイ側では算定しないことのほうが通常となっている。

百木さんはこちらの説明に理解を示しながらも、「あ~、女房に何て言おうかな…」と家計を牛耳る奥様との調整に頭がいっぱいのようだった。
「グロスアップ計算といって、日本の所得を最初からタイでも毎月合算申告納付する会社も多く、それなら年度末に追加納付分が発生することも避けられます。会社のポリシーに拠りますが…」。
百木さんから「一度、御社のほうから本社と話してもらっても良いですか?」と頼まれ、こちらから本社番頭の内山専務に説明することになった。ラークマイ社はタイが初めての海外進出で、本社にこの手の税務が分かる人はがいない。こういう時こそ、当社の出番である。
内山専務に説明を終え、本社預かり事項となり1週間が過ぎた頃。結果、百木さんの待遇はどうなったのかというと…。
(次回、後編に続く)

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の変更等、脚色部分があります。

Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博

所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke), Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表:日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadano@aporter.co.th
http://aporter.co.th/


但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。
本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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