2015.11月号

【連載21回】但野和博のコンサルコラム サポート実録記“タイの経理現場より”

tadano

ウイサー社編(最終回)「長かった取得までの道」

【前回迄のあらすじ】
~発給要件の運用が厳密化しているVISA/WP(ビザ・ワークパーミット)の申請代行業務。数々の不利な条件や、デモによる入国管理局の機能制限で申請手続きが延期されるなどのトラブルも乗り越えた。役員のWPをめぐる、最後の攻防にも決着が見えてきて…~

「まさか今さら申請書類にサインしている署名権者のワークパーミットまで問われるとは…」というのが正直なところであった。
幸いにもウイサー社ではタイ人の署名権者も登記していた。これまでほとんど接点を持たなかったが、申請書類をすべて差し替えたものに署名してもらおうと、慌ててアポイントメントを取り付け、何とか最後のハードルを乗り切ることができた。
これまた幸いにもこの方が弁護士だったので、事の流れを説明したらすぐに分かって了解してくれたのだが、これがほとんど名義貸しのような、最初の登記時だけ入ってもらったタイ人だったとしたら、こうもうまくはいかなかったかもしれない(※1)。こうして一連の申請手続きがようやく完了し、その1ヵ月後、延長済VISAも特段問題なく受領することができた。店長の林さんも長らくの不安からようやく開放されたのであった(※2)。

思い返せば、前半は試験範囲を間違えて覚えてしまったことに気づき慌ててもう一度覚え直し、後半はいざ全問正解を目指して取り組んだ答案と、容赦なく綻びを見つけ減点して
やろうとする採点官との攻防戦という、そんな6ヵ月間だった。今になって考えると、ゾッとすることだらけだ。
ウイサー社が営む飲食店は、今日もなかなか繁盛している。
一時期はこの店に出入り禁止になるのではないかと思ったくらい緊迫した状況に陥ったのも今は昔、今は林さんの注いだ生ビールの泡が心地よく自分の喉を潤おしている。
今日もそしてこの先も、どこかで誰かの身に起こるかもしれないVISA/WP取得ドラマ。以前は他人事のように思えたVISA周りの情報に敏感になったのは言うまでもない。翌日には90日VISAを携えたお客さんが早速来タイする。休んでいる暇はない。
ただ、今はこう言うのが正解だ。「アウ、ビアナマ、イークヌンゲーオ、クラップ!」
キレの良い1杯目を飲み干し、もう1杯頼むのに躊躇はなかった。
(次回から新編『タールア社編』が始まります)

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の変更等、脚色部分があります。

(※1)
本連載の第11~13回でも紹介したが、タイに有力な伝手がない場合、外資規制をクリアするために共同事業を組む際などに、最初に紹介してもらったタイ人と、その後、関係こじれたというのはよく聞く話だ。設立に携わった弁護士事務所などであればまだ良いが、一度紹介された程度のタイ人などの場合、開業後の役割分担が曖昧になって、途中で揉めたりすることがある。不必要に署名権者になってもらうくらいならば、あえて最初から署名権を与えないというのも選択肢だろう。ただ、本文中にあるように、最近は在住日本人のVISA/WP取得難易度が年々上がってきており、署名権を最初に与えておき、取得後退任してもらうという工夫も必要かもしれない。もっとも、最初からしっかり共同事業を組めることが前提であれば問題は少ないのだが、その場合でもタイ側の代表者にとって日本人のVISA/WP取得のために、大量の書類に署名をするのは面倒には違いないので、想定に入れたうえで依頼するべきである。

(※2)
VISA/WP取得手続きの最後の段階として、通常であれば最初に入国してから1年後の延長期日が記されたVISAが、この更新手続きの書類一式が受理された1ヵ月後に受領できる。それまでの期間は暫定VISAのような扱いとなるのだが、リエントリー手続きをすればタイ国外への出入国などは通常どおり可能だ。但し、受領予定日には必ずタイ国内にいる必要があり、原則本人がパスポート持参で出向く必要がある。特別なことがない限りは通常受理するだけだが、最近より厳しくなっているようなので気を抜かないようにしたい。場合によっては追加で求められる資料など、この時に間に合うように持っていくこともある。

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Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke),
Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、
顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表 : 日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadan@aporter.co.th
http://aporter.co.th/

 

tadano
但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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