2015.10月号

【連載20回】但野和博のコンサルコラム サポート実録記“タイの経理現場より”

tadano

ウイサー社編(7)「最後の攻防」

【前回迄のあらすじ】
~発給要件の運用が厳密化しているVISA/WP(ビザ・ワークパーミット)の申請代行業務。数々の不利な条件を何とか克服し、デモによる入国管理局の機能制限下での申請手続き延期なども乗り越え、申請はいよいよ最終段階を迎える…~

事務所写真の撮影構図にまでケチを付けられ(※1)、これ以上何を言われるのかと身構えていたが、次に入国管理局担当官の口から出たのはこんな質問だった。
「定款上の事業内容と税務上登記されている事業内容が一致していないけど、どうして?」
担当官の裁量のなせる厳しい問いだが、これは全うな方の指摘だ。いやむしろ全う過ぎるが故に盲点でもあった。大抵の会社では定款の事業内容くらいまでしか気にしておらず、税務登記にも事業目的が記載されていることはほとんど気に掛けていない。というよりも、知らない人のほうが多いだろう。
仮に知っていたとしても、税務登記上の事業目的欄は物理的に限られたスペースに、端的に目的を記載する形式となっており、主要な事業を抜粋して記載しても3つくらいまでしか記載できない。そうなると途中で当初考えていたものではなく、最初は傍流くらいに考えていた事業がメインになっていることも、サービス業ではままある話なのだ。
この時に税務登記内容の変更まで思いが至る人がどれだけいようか?大抵は今回のようにVISA更新のタイミングで気付くのがオチである。そして最後の極めつけは、「このサインしている役員のWPは?」
これははっきり言って盲点だった。根拠はこうだ。役員の資格としては別にタイ在住でなくても良い、しかし、署名権を持つのであれば、署名すること自体が業務の執行になる
のだからWPはあるだろうと。つまり、WP取得時における申請書に署名する外国人は、当然WPを取得しているものなのだと。
ごもっともなことで、ウイサー社の場合は今回署名してもらった東さんが、設立時にWPを取得しておくべきだということになるらしい(※2)。
実は以前にも同様のケースがあったのだが、その時はそこまで指摘されることはなかった。今さらながら、VISA/WP取得ルールを厳密に運用するという軍事政権のポーズは、
本気だったのだなと肌身で実感した。
もうあまり時間も残ってはおらず、さすがに再度出国してのNon-B VISA取り直しは避けたい。最初の写真と登記目的記載の相違は何とか修正申請対応することで乗り切れそう
だが、役員のWPについては、さてどうしたものか…。
(次回ウイサー社編最終回)
※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の変更等、脚色部分があります。

(※1)
事務所写真の構図の基本的な要件だが、まず前提として、当然ながら申請会社が実際にその場所を事務所として使っているかの真正さを証明する意味がある。通常はレンタルオフィス側でもわきまえていて、会社登記および税務登記として使えるように体制が整っているため問題はない。また、会社の看板をきちんと写し込むことも重要で、これは先行して対応するVAT登記(税務登記)時に必要なので、VISA申請時に問題はないだろう。以前は紙で印刷した看板で代用もできたらしいが、仮に本来の看板が完成するまでの対応策でも、発泡スチロールの切り張りで文字を作成する位は必要である。ただし、これも本来は正式な看板ではないので通せるかどうか責任は持てない。このほか、構図として事務所が入居している建物全体や社内の写真など数点必要なので、少し多めに色々な構図で撮影しておいた方が良いだろう。
(※2)
日本人ダイレクターがWPを持っていない案件では、次のようなケースもあった。そのダイレクターは日本在住で、来タイは出張ベース程度。現地には日本人スタッフが常駐しているが、ダイレクターではないため当然署名権を持たず、日本にいるダイレクターが署名権者として、その常駐スタッフのVISA更新手続きの申請書に署名して進めていた時の話である。当初はVISA取得できたのだが、更新時にウイサー社同様の指摘を受けた。担当官曰く、「タイではWPを持っていないと署名はできないから、申請書類を日本で署名したということを証明できるよう、在日タイ大使館でノータリー(公証)してもらう必要がある」とのことだった。確かに筋は通っており、担当官の裁量による最たるもので、やはり万難を排してダイレクターになる日本人は、可能な限り在タイで署名権を持っているべきかと考えている。

 

accounting porter
Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke),
Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、
顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表 : 日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadan@aporter.co.th
http://aporter.co.th/

 

tadano
但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

gototop