【連載14回】徳谷智史のグローバルトップリーダーへの「秘訣」~

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【第14回】アジアでも通用する「真」の問題解決スキル

最近、戦略系コンサルティングファームや数多くの業界トップ企業から「問題解決スキルを高めたい」という研修のご相談が数多く寄せられている。東南アジアにおいても経営層、社員の問題解決スキルは非常に重要だ。アジアの企業でも経験ベースでの意思決定が求められる機会が増え、誤った判断により経営危機を招いたというケースもある。今回はリーダーの皆様に、問題解決スキルのステップをお伝えしたい―。

①問題定義(What):問題は何か?

問題解決において、まず行うべきは「問題定義(What)」だ。問題はつい解決を急ぎがちだが、大切なことは、問題が何か?を明確に定義すること。
そもそも問題とは「あるべき姿と現状とのGAP」である(図1)。GAPを明確にするには、まずはあるべき姿を明確にすることが必要だ。定性、定量ともに、いつまでにどんな状態であるべきなのか、そこに対する現状はどうかを考えるべきである。アジアでは本社の考えるあるべき姿と、現地の考えるあるべき姿が一致していないケースも多い。
また、現場では、メンバーが現状をそもそも悪いと思っていないことすらある。
リーダーはあるべき姿を明確に定義して、現状とどの程度のGAPがあるのかの共通認識を持たせることが大切だ。

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②問題箇所特定(Where):問題はどこにあるのか?

問題定義ができたら、次は、「問題箇所特定(Where)」である。問題を定義したら打ち手を考えるか、問題の発生要因を考えるのが一般的だが、その前に問題箇所の特定をすることが実は重要だ(図2)。
例えば、業績成長目標に対して売上が達していない状況(GAP=What)があるとする。そこで直ぐに打ち手を打っても思いつきになるし、漠然と何故売上が伸びないのかの要因を考えるのも難しい。
売り上げが伸びていないにしても、例えば客数なのか客単価なのか、客数は新規なのか既存なのか、セグメントでいうとどこなのかを明確にする。既存の●●業界の顧客の、▲▲商品の継続率が低い、とまで特定できれば、その次の要因が圧倒的に考えやすくなる。医者が精密検査をする前に、まずは身体のどこが調子が悪いのかを聞いて箇所を特定するのと同様だ。アジアのコンサル現場では、チャネル別かつ、営業プロセス別、商品別などで見ることが有効なケースが多い。

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③問題構造の深堀(Why):問題はなぜ起こるのか?

問題箇所を特定したら、次は「問題構造の深堀(Why)」である。何故その問題が発生するのかという要因を深堀して、その根本原因から本質的に取り組むべきこと(=課題)を明確にすることだ(図3)。
表面上対症療法をどれだけ行っても、本質的な課題に対して打ち手を打たない限り、問題は再発してしまう。ポイントは、何故それが起こるのかを繰り返し問い続けること。薬か手術かの打ち手を考える前に、痛みの根本原因を特定するべきなのだ。ここをないがしろにして打ち手を打つと、いくらやれども成果が出ないということになる。
例えば、東南アジアの某企業では伸び悩む売上をなんとかしようと新商品開発にいそしんでいたのだが、売上減少の大きな要因は結局、特定のクライアントへの関係性が悪化していて棚に置いてもらえていないことにあった。この場合、新商品をどれだけ開発しても意味はなく、まずは関係悪化の要因を踏まえて、棚に置いてもらうための関係改善策を次のステップで考えることが必要になる。
余談だがこの要因を深堀していくと評価制度や業務設計のみならず、日本人トップのマネジメントの仕方や、日本本社との関わり方に帰着することもあり、アジアでのコンサル現場の興味深い点だ。

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④打ち手の策定(How):どんな打ち手が最適か?

問題構造を深堀して課題を特定したら、最後は「打ち手の策定(How)」だ(図4)。打ち手はつい思いついたものを決め打ちで実行したくなってしまうが、注意すべきは、課題に対応した打ち手を複数洗い出し、最適なものを選択すべきであるということだ。
置かれている状況によってとるべき打ち手は変わる。中長期でアジアでの大きな成長を目指すための打ち手なのか、目先の四半期の業績の改善の打ち手なのか、課題に沿って複数の打ち手を洗い出した後、インパクトや実現性の観点から評価をして絞り込むべきである。
アジアのコンサル現場では、目先と中長期の打ち手のバランスが難しい。つい目先だけを追いがちだが、少し先を見た打ち手を並行して走らせることができるかも大切だ。前出の例では、関係改善だけをしてもその先の成長はない。中長期で成長していくための課題を改めて明確にして、そちらへの打ち手も打っていくことが求められる。

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What→Where→Why→Howの流れで自社の問題を解決せよ

以上見てきたように、問題解決には、What→Where→Why→Howの4ステップがある。そもそも経営層、現場の管理職であればこうしたフレームに沿って考えられるスキルを強化すべきであり、同時に、自社の状況もこうしたフレームで捉えなおすことが必要だ。
アジアでの経験が長くなるにつれ、リーダーの皆様は直感、打ち手先行で考えていないだろうか。もっとも、自分のことを客観視するのは難しいものだ。そんな時は是非お気軽にご相談いただければ幸いだ。

 

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徳谷 智史(とくや さとし)
エッグフォワード株式会社代表取締役。ASEANビジネス展開支援のエキスパート。
大手戦略コンサルティングファームにて、タイオフィス立上・代表就任後、独立し同社を設立。日本では教育事業を手掛けるほか、タイ・東南アジア諸国において、日系企業を中心にメーカー、外食、小売、IT、商社など100社以上の幅広い分野の成長支援、展開支援を行う。
東洋経済オンライン、アジア消費者ラボ等メディア掲載多数。
コンサルティング、講演等のご相談は下記まで。

 

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