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第13 回 ミャンマーのコンドミニアム法 施行細則の概要

第13 回 ミャンマーのコンドミニアム法 施行細則の概要

堤 雄史(つつみ ゆうじ)
TNY国際法律事務所共同代表弁護士

東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。SAGA国際法律事務所(www.sagaasialaw.com)代表であり、2016年2月よりタイにTNY国際法律事務所(www.tny-legal.com)を設立した。タイ法及びミャンマー法関連の法律業務(契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。

問い合わせ先:yujit@tny-legal.com

はじめに

2016年1月にコンドミニアム法が成立したものの、コンドミニアム法上は、コンドミニアムに関する詳細な定義などが規定されておらず、施行細則が成立するまでは実務上運用できない状況が続いていた。

そのような中、2017年12月7日にコンドミニアム法施行細則が成立したことにより、コンドミニアム法上抽象的に規定されていた事項の詳細が規定された。

コンドミニアム開発

外国人または外国企業が共同開発者としてコンドミニアム開発に携わることができるようになった。すなわち、コンドミニアム開発にはそのためのライセンス取得が必要とされており、開発者がライセンスを取得するが、開発者は、共同開発者を指名できるとされている。コンドミニアム法施行細則上、この共同開発者には、外国人または外国企業も含むものと明記され、外資もコンドミニアム開発に共同開発者として関われることが明確になった。

開発者自体の定義には、特段外国人または外国企業を含むといった文言はなく、明確ではないものの、共同開発者の定義であえて、外国人または外国企業も含むとされていることからすれば、開発者はミャンマー国民またはミャンマー企業に限られるのではないかと解される。

開発者となるためには、ビジネスライセンス及びコンドミニアム建築の申請をしなければならない。会社が、ビジネスライセンスを受けるためには、有効な会社登録書及び建物の書面、納税証明書、申請しなければならない。ビジネスライセンスの有効期限は、5年であるが、延長が認められている。

コンドミニアムの販売

コンドミニアム法上、開発者はコンドミニアムのアパートメントの40%を外国人に販売することができるとされていたが、当該%の基準が部屋数であるのか面積であるのかがコンドミニアム法上は明らかでなかった。しかし、コンドミニアム法施行細則上で、40%は「販売可能な面積」に基づいて計算されることが明らかになった。また、外国人にコンドミニアムの売却をする場合には、上記割合の超過の如何に関わらず、事前に登記官に問い合わせを行う必要がある。

また、コンドミニアムの基礎工事が30%完了した段階以降、開発者はコンドミニアムを前売りすることができる。この場合、購入者は登記官に当該区画を購入する旨を通知しなければならない。

コンドミニアムの建て替え

建て替えに関する手続きが規定された。具体的には執行委員会が、再建を望む場合又は自然災害などで利用が不可能になった場合、一般総会又は特別総会によって、組合員の75%以上の賛成によって再建を決定することができる。

運用時期

コンドミニアム法成立以前から存在している登記法に基づき設置されている農業灌漑省の登記事務所とは別に、建設省により、コンドミニアム登記事務所が設立される。コンドミニアム法上のコンドミニアムといえるためには、このコンドミニア登記事務所における登記手続を経る必要があるため、コンドミニアム法の実際の運用はこうした登記事務所が設立されて以降になるものと考えられる。

したがって、現時点(2018年4月4日)においてはコンドミニアム登記事務所自体が存在しないため、コンドミニアム法上のコンドミニアムは存在しないと解される。実務上、コンドミニアム法に基づいて外国人がコンドミニアムの所有権を合法的に取得できるまでには、もう暫く時間を要し、今後の運用に留意する必要がある。

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