ミャンマーの最新ビジネス法務

第26回 工場再開のための検査及び補償に関する政府からの通知

在緬弁護士が解説 ミャンマーの最新ビジネス法務

はじめに

4月19日に突如、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のため操業停止していた工場などが業務を再開するには、労働・入国管理・人口省及び保健・スポーツ省による各工場、作業所及び商業施設に対する職場検査を同30日(その後、5月15日まで延長された)までに受け入れ、保健・スポーツ省が発表しているインストラクション及び指示を遵守している場合のみ再開が許可される旨の通知(以下「本通知」という)が出された。

その後、本通知に関連する2つの通知が出たため、以下に紹介する。

1.補足通知

5月3日に本通知の補足通知が労働・入国管理・人口省より発布された (以下「補足通知」という)。内容は以下の通りである。

(1)COVID-19予防期間中、本通知に記載されている工場、作業所及び部門のうち、以下に記載された業務を必要不可欠な業務、多くの国民に関係するサービス及び多くの国民にとって必要な業務として指定する。

必要不可欠な業務

多くの国民に関係するサービス

多くの国民にとって必要な業務

(2)上記に含まれる業務は事業を継続し、保健・スポーツ省の COVID-19予防のため工場、作業所が遵守すべき事項に沿って、準備を行わなければならない。準備が終わり次第、それを証明するものを労働・入国管理・人口省及び保健・スポーツ省へ提出し、関係機関の調査を受けられるようにしておく必要がある。

2.補償通知

4月28日に本通知により事業をできなかった会社の従業員に対する補償に関する通知が労働・入国管理・人口省より発布された(以下「補償通知」という)。内容は以下の通りである。

(1)本通知に基づき一部の工場、作業所、部門は同20日から稼働を予定していたが、検査を受けるため一時的に閉鎖し、当該工場、作業所、部門の社会保障に加入している労働者は20日から工場が再稼働するまで勤務することがなかった期間がある。

(2)当該勤務を一時停止し、社会保険に加入している労働者のため、勤務停止日数を換算し、2012年社会保障法13条(B項)2及び同法100条に基づき20年1月に支払った社会保障料で算出された給与の40%を給付することを認める。

(3)上記(2)に該当する工場、作業所、部門の事業者は社会保障に加入している労働者のため、社会保険の給付を得るため関連する地区の社会保険局へ補償通知が発布された日から申請を行うこととする。

3.留意事項

上記の補償通知について労働事務所に確認したところ、担当官によれば本通知又は補足通知に基づき期間内に検査を経て合格した会社の従業員のみが対象になるとのことであり、期間内に検査を受けない場合は補償を受けられないとの回答を得た。また、事業を完全に停止した期間があることも必要である。

在宅勤務の形であっても業務を継続している場合には補償を受けることができない。更に、社会保障料を算出する際の給料は30万チャットが上限であることから、40%の補償の前提となる給料も上限は30万チャットとなる。従って、実際に補償対象となる企業は限定的であり、かつ、金額も実際の給与額の40%とは限らない点に留意が必要である。

寄稿者プロフィール
  • 堤 雄史 プロフィール写真
  • TNY国際法律事務所共同代表弁護士
    堤 雄史(つつみ ゆうじ)

    東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.代表であり、グループ事務所としてタイ(TNY Legal Co., Ltd.)、マレーシア(TNY Consulting (Malaysia)SDN.BHD.)、イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co., Ltd.)、日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)、メキシコ(TNY LEGAL MEXICO CO LTD)が存在する。タイ法、ミャンマー法、マレーシア法、日本法、メキシコ法及びイスラエル法関連の法律業務(契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。

    Email:yujit@tny-legal.com
    Tel:+95(0)1-9255-201
    URL:http://tny-myanmar.com/
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