ミャンマーの最新ビジネス法務

第29回 DICAからの取締役に関する通知

はじめに

昨年10月14日に計画財務省傘下の投資企業管理局(DICA)より独立取締役に関する2020年第90号通知が発布された。外国会社は非公開会社であるため直接の影響はないものの、ミャンマーにおいてもコーポレートガバナンスを重視する方針であることが意味を有する。

そして同月20日には、居住取締役に関する例外措置を規定した2020年第92号通知が発布された。これはミャンマーで国際線旅客機の乗り入れ禁止措置が導入された3月29日から公式な入国再開日までは期間に算入されないとするものである。他国では同様の例外措置が早くから発表されていたものの、ミャンマーでは当該発表がそれまで行われていなかった。多くの日本人取締役がミャンマーに戻れない状況になっていたため、居住取締役をどうするかという点について懸念されていた。

もっとも、いつを公式な入国再開日とするのか、また3月29日から公式入国再開日までの期間を含めない場合、1年間をいつからいつまでの期間として考えるべきであるかといった点は不明確である。

しかし、少なくとも92号通知により、公式の入国再開日までの期間中に居住取締役に関する規定の違反責任を問われることはないと解される。

以下、90号通知及び92号通知の内容を紹介する。

90号通知の内容

1. 本通知、独立取締役の資格はミャンマー会社法に基づき上場企業又は100名以上の株主がいる公開会社に対する効果的なコーポレートガバナンスを提供することを目的として発布された

2. 独立取締役とは以下を意味する
(a) 現在または過去3会計年度において上述の企業またはその関連事業体で雇用されていない取締役
(b) 上述の企業又はその関連事業体により現在雇用されている又は過去3会計年度において雇用されている家族がいない取締役
(c) 直接又は関連事業体を通して資本又は議決権の5分の1又はそれ以上を所有していない取締役
(d) 企業と重要な金銭的関係がある他社の業務執行役員を務めていない取締役

3. 関連事業体とは、会社法第1条(c)(xxxii)に基づき規定された関連事業体を意味する

92号通知の内容

1. ミャンマー会社法第4条(a)(v)で基本的な要件として、本法に基づき登記されている会社はミャンマー連邦内に居住する取締役を少なくとも1名有しなければならないと規定している

2. ミャンマー会社法第1条(c)(xix)で、居住者とは会社設立日から起算して各12ヵ月の期間において、少なくとも183日以上ミャンマー連邦に居住する者をいうと規定している

3. DICAは、COVID-19パンデミックによるミャンマー連邦内に出入りできる港の公式な閉鎖日である20年3月29日から公式な再開日までの期間は、ミャンマー会社法第1条(c)(xix)により規定された居住取締役としての12ヵ月間の算定には含まれないと発表した

4. 本指令は指名済みの会社取締役に関係する事項に限り適用されなければならない

寄稿者プロフィール
  • 堤 雄史 プロフィール写真
  • TNY国際法律事務所共同代表弁護士
    堤 雄史(つつみ ゆうじ)

    東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.代表であり、グループ事務所としてタイ(TNY Legal Co., Ltd.)、マレーシア(TNY Consulting (Malaysia)SDN.BHD.)、イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co., Ltd.)、日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)、メキシコ(TNY LEGAL MEXICO CO LTD)が存在する。タイ法、ミャンマー法、マレーシア法、日本法、メキシコ法及びイスラエル法関連の法律業務 (契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。

    Email:yujit@tny-legal.com
    Tel:+95(0)1-9255-201
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