日刊工業新聞

中国の「未豊先老(みふせんろう)」と 日本のチャンス

高齢者ビジネス輸出

 中国の総人口は2018年末時点で13億9538万人だった。建国の1949年には5億4167万人だったので約2・6倍になったことになる。この間、60―61年には大躍進政策の失敗やその後の飢饉(ききん)で2年連続減少したこともあったが、基本的には右肩上がりで増加している。しかし、人口増加率は年々低下してきており2018年には前年比0・4%増に留まった。

 また、人口構成は、改革開放直後(1982年)の「富士山型」から「つぼ型」へと徐々に変化してきている。78年の改革開放後、経済が目ざましい発展を遂げる中で、社会は豊かになり、平均寿命は改革開放直後(1981年)の67・77歳から2015年には76・34歳へと10歳弱も伸びた。だが、1979年に将来の食糧難に備えた安全保障の観点から「一人っ子政策」を導入し、出生率(年出生人数÷年平均人数)が改革開放直後(81年)の2・091%から2018年には1・094%へとほぼ半減した。そして、少子高齢化が進み、人口構成は「富士山型」から「つぼ型」へと変化していくこととなった。

 なお、13年に開催された中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)では「一人っ子政策」の軌道修正を決定、16年には「二人っ子政策」に移行した。これを受けて出生率は15年の1・207%をボトムに一旦は上昇に転じた。だが、教育費が高いことなどを理由に2人目の子どもの誕生を望まない家庭が多かったため、18年には再び出生率が低下し建国以来の最低を更新することとなった。

 この「つぼ型」への変化は経済成長する上ではマイナスの影響をもたらす。「富士山型」の時期には、新たに経済活動に従事する若年層が年々増えるため、所得の伸びも高くなり経済成長を後押しすることとなった(人口ボーナス)。しかし、「つぼ型」になると、新たに経済活動に従事する若年層が年々減少するため、経済成長の足かせとなってくる(人口オーナス)。

 そして、中所得国の中国では先進国になる前に高齢化が進む「未豊先老」の懸念が高まっている。中国経済は、少子高齢化が成長の勢いを鈍化させる局面に入っている。

 日本でも少子高齢化が世界に先駆けて進展しており、経済成長の足かせとなっている。そして、日本を追うように中国ではこれから少子高齢化が加速してくる。そこには、健康食品や介護ロボットなど高齢者ビジネスを中国へ輸出するというチャンスの芽がでてくるとの見方もできる。特に、日本でも社会問題となっている老人ホームなどの経営では、過度な財政負担とならず、介護関連企業は十分な収益をあげ、高齢入居者は生きがいのある老後を過ごせる、というようなビジネスモデルが構築できれば、日本の社会問題の解決に資するだけでなく、中国へ輸出する道も開かれるだろう。少子高齢化というピンチをチャンスに変えることを期待したい。

※記事提供:日刊工業新聞(2019/7/24)
◇ニッセイ基礎研究所
 経済研究部・上席研究員
 三尾幸吉郎v

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