2020.02月号

日刊工業新聞

変革2020業界再編 自動車 クルマ、変わる勢力図

変革2020業界再編 自動車 クルマ、変わる勢力図

CASEが促す異業種連携


次世代の移動サービスや自動車関連技術をめぐる主導権争いが、業界の垣根を越えて激化している。巨大IT企業やベンチャーなどが熱視線を送り、自動車メーカーの足場が揺らぐ。それは世界トップクラスのトヨタ自動車も例外ではなく、新たな競争軸で覇権を握るには1社では不可能というのが各社の共通認識だ。トヨタが水と油ほど企業文化が異なるソフトバンクと提携したことは危機感を如実に示している。百年に一度と言われる自動車産業の地殻変動は、勢力図をどう書き換えるのか―。

脱メーカー

 「『自動車をつくる会社』から、移動に関するあらゆるサービスを提供する『モビリティーカンパニー』にモデルチェンジする」―。トヨタの豊田章男社長が、自動車メーカーからの脱却を宣言したのが2018年。そこからトヨタは、MaaS(乗り物のサービス化)やその構成要素となるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応策を矢継ぎ早に打ち出した。

 “仲間づくり”をキーワードに異業種を含めた提携戦略を加速。ソフトバンクとは18年に共同出資で、MaaS事業を手がけるモネ・テクノロジーズ(東京都港区)を設立した。モネにはホンダやマツダ、スズキなど国内自動車メーカー8社も出資したほか、金融・保険や不動産など400社以上が参画している。豊田社長は「車業界がオープンな形で協業する第一歩を踏み出せた」と話す。

トヨタはソフトバンクとの提携で大変革を生き残る力をつける(18年10月の 「モネ・テクノロジーズ」設立の記者会見)
トヨタはソフトバンクとの提携で大変革を生き残る力をつける(18年10月の 「モネ・テクノロジーズ」設立の記者会見)

“黒船襲来”

 トヨタがソフトバンクと組んだのも、通信やITプラットフォーム(基盤)といったMaaSを提供するための要素技術を獲得したかったからに他ならない。IT業界では強力なプラットフォームを構築した米アップルやグーグルなど「GAFA」と呼ばれる企業が世界を席巻するようになった。次世代自動車の領域に黒船が襲来した今、MaaSの提供基盤の確立がトヨタの生命線となっている。 

 提供基盤の維持・発展には規模の論理がものを言い、トヨタも基盤部分は協調領域ととらえ陣営づくりにまい進。提供基盤の上で展開するサービスでは、米ウーバー・テクノロジーズや中国・滴滴出行(ディディチューシン)などに出資した。

 ソフトバンクはZホールディングス(旧ヤフー)を傘下に持ち、同社は対話アプリケーション(応用ソフト)大手のLINEと経営統合で合意済み。両社合わせて1億人を超える顧客基盤は、トヨタがMaaSを事業化する上で強力な橋頭堡(ほ)になりうる。

生き残る!

 トヨタとソフトバンクの提携には、GAFAへの対抗軸という共通認識が透ける。ITやソフトウエア技術とハードという互いの強みを持ち寄り、世界を巻き込む経済圏を築き上げられるか。「生きるか死ぬかの瀬戸際」という豊田社長の言葉通り、業種を超えた提携・再編が自動車・IT業界を大きく変革させようとしている。(名古屋編集委員・長塚崇寛)

※記事提供:日刊工業新聞(2020/1/7)

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