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中小工場にAI広がる

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企業のAI利用

中小企業・小規模事業者による製造現場の人工知能(AI)導入が広がってきた。HILLTOP(ヒルトップ、京都府宇治市、山本正範社長)は、山善と業務提携し、AIで工作機械の高度な加工を可能にするサービスを始める。内外(群馬県高崎市、小沢淳社長)は、AIを活用しアルミニウム鋳造自動化ラインを構築する。中小企業の労働生産性向上は喫緊の課題であり、今後も全国的にAI導入拡大が見込まれる。

電ヒルトップ、NCデータ自動生成

▲ コムロジックを開発中のヒルトップの生産現場
アルミニウム切削部品試作専業のヒルトップと山善は、部品加工の自動プログラミングサービス「COMlogiQ(コムロジック)」を2022年1月を目処に発売。山善は工作機械の付加価値を高めるオプションとして提案し1年間独占的に同サービスを扱う。価格は未定だが、サブスクリプション(定額制)方式で販売する。
コムロジックはAIを用いた自動加工プログラム作成システムとヒルトップが蓄積した部品加工の職人技データベースを連動。熟練工不在でも5軸マシニングセンター(MC)などを高度な加工プログラムで操作できる。
ユーザーとなる生産担当者が加工する製品の3次元(3D)データをヒルトップに提供すればクラウド上で必要な数値制御(NC)データを自動作成。データを受け取ればすぐに加工できる。ヒルトップの山本勇輝常務は「省人化や人手不足対応に加え、技能承継問題も解決できる」とする。

内外、鋳造不良「ゼロ」

▲ 内外はAIを活用したアルミ鋳造の自動化ラインを構築
一方、自動車向けアルミ鋳造部品が主力の内外は製造にAIを活用。AIで解析した検査データと製造データを連携して生産性と品質を高める。次世代自動車に必要な高品質ウォーターポンプの新規受注を獲得する狙い。投資額は最大6億円。
検査工程にカメラを導入し深層学習(ディープラーニング)による製品の良否判定を行う。さらに品質データとアルミニウム鋳造の加工データを連係してAIで解析。金型の内部温度や気候など品質に関わる条件と合わせ、不良品の発生をゼロに近づける。アルミニウム鋳造機のバルブや流量など加工時の調整も自動化する。
同社は電動車部品の受注が増えており、内燃機関向け部品からの転換を進めている。新製造ライン導入もこの一環。小沢社長は「どこにどれぐらいの大きさ、頻度で不良が発生するのかデータを取得し製造に反映できれば、まだまだ品質は高められる」とする。今後、収益性を高め、23年までに従業員の給与水準を現状比で2割引き上げることを目指す。
経済産業省によるとわが国の中小企業にAIを導入すると25年までに11兆円の経済効果が見込まれる。
※記事提供:日刊工業新聞(2021年5月20日)

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