日刊工業新聞

グローバル経営 適地生産適地販売 クボタ−世界ブランド構築着々

産業用エンジン、アジア攻略 タイ・中国の拠点で生産能力増強

農業機械や建設機械などの製品を通じて“グローバル・メジャー・ブランド”を目指すクボタ。産業用エンジンでは、欧米市場ですでに地位を確立しているが、世界ブランド構築へアジア市場を重点的に攻略中。顧客への迅速な供給体制の整備を進める。生産の現地化を順次図り、競争力を高めてシェア拡大を狙う。

タイで生産するエンジンを搭載したコンバイン

クボタのエンジン事業では農機や建機に搭載の立型ディーゼルエンジンがメーンで、社内向けが40%、外販が60%。2019年12月期までの中期計画では、社内向けの供給対象となる農機や建機の競争力強化への寄与と、発電機などさまざまな産業機械向け外販品のシェア拡大を目標に掲げる。中でも外販品の17%にとどまっているアジア市場向けの比率向上を目指す。

立型ディーゼルエンジンは19年末で年95万台生産を計画。タイと中国の生産拠点の能力を増強し、16年で「立型ディーゼルエンジンの海外生産比率は10%を超えた」(佐々木真治専務執行役員エンジン事業部長)という。今後も“地産地消”を基本とし、両拠点で設備投資を検討していく。

中国では12年に設立した江蘇省無錫市の拠点で組み立てを手がけている。日本から順次工程を移管中で、17年4月には堺製造所(堺市堺区)で製造してきている120ー170馬力、排気量6.1リットルの4気筒エンジン「08シリーズ」の組み立てを始める。

中国市場向けの畑作用ホイール(車輪型)コンバインに搭載するエンジンで、同国での生産機種では最大の排気量、馬力帯となる。同省蘇州市の農機生産拠点に供給する。
無錫市の拠点には約1億円を投じ、生産ラインを新設する。日本で部品を調達して加工後中国に送り、組み立てと塗装、エンジン本体にファンなどを取り付ける艤装(ぎそう)は現地で担う予定。すでに塗装と艤装の工程は現地で着手している。

同社は顧客への柔軟な製品供給体制の整備や在庫削減を目指し、リードタイムの短縮を進める。今回の組立工程移管で、日本からの輸出に比べ約2週間の輸送期間短縮を実現、現地在庫も圧縮可能になるという。こうした体制を整えることで「外販でも同様に顧客対応できる」(佐々木専務執行役員)とアピールする。

タイでは、自社の農機事業の進展に合わせて業容を拡大してきた。1978年、現地の名門企業であるサイアムセメントグループと合弁会社を設立して農機用ディーゼルエンジンの販売を開始。2008年に海外初のエンジン鋳物工場を設立した。11年には立型ディーゼルエンジンで初の生産拠点を新設した。エンジン鋳物の加工から機体の組み立てまで、農機を現地で一貫生産できる体制を実現している。
生産するのは、タイ国内向けトラクターや中国向けコンバインなどに搭載するエンジン「03シリーズ」。3気筒の排気量1.7リットルから4気筒の同2.4リットルまでをそろえる。現地調達率は9割に到達。円高の状況下でも競争力を維持できる拠点としてモノづくりに挑んでいる。

※記事提供・日刊工業新聞(大阪・窪田美沙 2016/12/28)

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