2019.03月号

ASEANビジネス法務 最新アップデート

カンボジア労働法アップデート2賃金支給

 今回は、前回に引続き、カンボジア労働法令のアップデートとして、賃金の各月2回支給についての省令についてご紹介します。前回の年功補償と同じく、労働者の利益を図ったものになります。

1.従来の労働法規制
 (1)労働法は、賃金の支給回数について、以下の定めを置いています(116条)。
①工員(主として肉体労働を提供する従業員):各月少なくとも2回、支給の間隔は最大で16日まで
②その他従業員:各月少なくとも1回
(2)労務提供から賃金支払いまでの間隔についての規制はなく、時間外手当等の計算の関係で、翌月払いとされている例が多く見られました。

2.2018年9月21日付け省令
 2018年9月21日付け労働職業訓練省(MLVT)省令(Prakas)442号により、2019年から、以下の規制が導入されることが定められました。上記労働法の規制に上乗せをするものになります。
①全従業員を対象に、各月2回の賃金支給を義務付ける
②支給日は、1回目について各月第2週、2回目について各月第4週
③1回目は各月の基礎賃金の半額、2回目は基礎賃金額の残額と諸手当等の合計額

3.2019年1月16日付けMLVTプレスリリース
 上記省令は、②が当月分の賃金等を当月に支払うことを義務づけるものであれば、時間外手当や欠勤による調整の反映が著しく困難であるとして、批判が多くありました。これを受けてか、MLVTは、事実上この省令を改正するにも近い、表題の書面を発行しました。詳細は省きますが、要点として、縫製工場を対象とした調査結果とともに、1回目は当月の16日から25日の間、2回目は翌月の1日から10日の間となっている賃金スケジュールを例示し、これを適法と判断しているとの声明になります。少なくとも当面は、この声明に従った判断がなされるものと思われます。

4.賃金支払スケジュールの設定
 省令の求める通り当月第2週・第4週に支払うことももちろん可能です。従業員数が多いことなどにより、諸手当等の算定の困難がある場合、上記プレスリリースを前提とすると、以下とすることが可能です。
①1回目は当月16日~25日(基礎賃金の半額)
②2回目は翌月1日~10日(基礎賃金の残額と諸手当)
③支給の間隔が最大で16日まで
(例)(a)1回目を当月16日、2回目を翌月1日
(b)1回目を当月25日、2回目を翌月10日

5.その他
 省令には罰則の記載がないのですが、MLVTは罰則の適用が可能と考えているようで、上記プレスリリースは法令遵守の調査活動と違反への罰則適用を明言しています(労働法116条違反には罰金があり、これを適用する意図のようです)。縫製業等の製造業を中心に、調査活動がなされていくものと思われます。

 

One Asia Lawyersグループ カンボジア事務所


吉田重規

2011年弁護士登録後、大手スポーツメーカーの企業内弁護士として勤務、2018年4月よりOne Asia Lawyersに参加。カンボジアへのクロスボーダー進出支援業務、M&A、労務、税務、紛争解決案件等を担当。カンボジア日本人商工会総務委員(2018年)。
shigeki.yoshida@oneasia.legal

 

One Asia Lawyers (旧JBL Mekong)

One Asia Lawyersは、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、東京にオフィスを有しており、日本企業向けにASEAN地域でのシームレスな法務アドバイザリー業務を行っております。各事務所には、日本人弁護士・専門家が常駐しており、ASEAN地域に特化した進出法務、M&A、コーポレート・ガバナンス、労務、税務、知的財産、不動産、訴訟・仲裁対応などについて、現地法弁護士と連携の上、現地に根付いた最適なサービスを提供しております。
HP : oneasia.legal/ Mail : yuto.yabumoto@oneasia.legal

 

【One Asia Lawyersグループ カンボジアオフィス】

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