法務・会計・税務 2019.09月号

バングラデシュでの事業展開に向けて

 BRICsに続くNext11の一つであるバングラデシュは、過去20年にわたりGDP成長率約6-7%を維持しており、今後大きな成長が期待される国の一つです。とくに、工場労働者の平均賃金がアジア各国で上昇する中、バングラデシュの工場労働者の平均月賃金は約100米ドルとアジア最低レベルにとどまっており、人件費の安さや豊富な労働人口が大きな魅力となっています。

 繊維関係の企業や、ホンダ(二輪)やYKK等が大きな工場を設置していることに加え、住友商事がデベロッパーとなり日本企業向けに開発されるアライハザール経済特区(SEZ)の準備も進んでおり、今後も日系企業の進出が予想されるところです。

 本稿では、バングラデシュでの事業展開に際して、認識しておくべき法規制の概要について以下にまとめます。

1.外資規制
 下記のように法律上明記されている分野を除いて、外国資本の制限はないのが原則です。

 但し、法律上規制がないように見えても、業界団体等で別途参入規制を設けていることがあり(例:運送業協会規則)、業界ルールや慣習についても調査が必要となる点に留意が必要です。

 また、海外送金は、バングラデシュ国内向け・国外向けともに、外為法(Foreign Exchange Regulation Act)の規制の対象となり、中央銀行の認可が必要となるのが原則であるものの、外資促進保護法(Foreign Private Investment Act)に基づき中央銀行が制定したガイドライン(Guidelines for Foreign Exchange and Transactions, “GFET”)に従う限りにおいて、中央銀行の認可を必要とせずに行うことが可能となっています。

2.進出形態
 既存のバングラデシュ法人に資本参加したり、現地企業と合弁会社を設立する方法を除き、日系企業の主な進出形態としては、

 ①現地法人(有限責任会社)、②支店、③駐在員事務所の3つがあります。①は利益を生む商業活動ができるものの、会社法上・税法上必要な手続きや清算手続きが煩雑等の理由により、②または③を選択する企業も多くなっています。②も原則としては商業活動ができないものの、当局の許可を取得することによりそれが可能になります。③は営利事業を行うことはできず、情報収集拠点等の機能に限定されます。インド法上認められるようなプロジェクトオフィスは制度としてありません。

 現地法人(子会社)を設立する場合には、会社法および関連法に従い、1)登記所(RJSC)において商号承認を取得、2)定款作成、3)銀行口座開設と送金証明書(Encashment Certificate)取得を経て、4)設立証明書(Certificate of Incorporation)を取得します。そのうえで、投資庁(BOI)での投資許可、中央銀行の許認可、営業許可、納税者番号(TIN)の取得等が必要になります。インドやスリランカ等周辺国と比較して、時間がかかることは否めず、現地法律事務所等を利用しても2-3ヵ月はかかるのが一般です。支店・駐在員事務所の設置の場合は、1-2ヵ月かかることが一般です。

3.労働法
 インド等と同様に、管理職にある者は、労働法の保護を受ける「労働者」から除外されるものの、雇用や解雇の権限を有しない者は、判例上場、労働者とみなされる点に注意が必要です。

 労働者を雇用するにあたっては、採用通知書(Appointment Letter)の交付は義務となっており、基本的な雇用条件を明記する必要があります。

 解雇は、使用者は原則として120日前までに労働者に通知する必要があります。就業規則違反等懲戒解雇事由が存在しても、労働者側に告知聴聞(釈明)の機会を与える必要があり、即時解雇できないのが一般です。

 全従業員数に占める外国人の比率は、製造業で5%、サービス業で20%を超えてはならないとされていますが、輸出加工区(EPZ)や経済特区等には別途適用される法規があり、規制が緩和されている点もあります。


志村公義
One Asia Lawyers 南アジアプラクティス代表(インドの提携事務所Acumen Juris法律事務所に出向中)。

2001年弁護士登録。外資系法律事務所において外資系企業への日本投資案件の法的助言を行う。その後、日系一部上場企業のアジア太平洋General Counsel、医療機器メーカーのグローバル本部(シンガポール)での法務部長等、企業内法務に約10年間従事した経験を踏まえて、ASEAN及び南アジアにおける日系企業のコンプライアンス体制構築、内部通報の導入支援、コンプライアンス監査、研修、不正対応等の対応を行う。現在はインドに常駐し、インドをはじめとしたバングラデシュ、ネパール、スリランカ、パキスタン等の南アジアの法務案件の対応を行う。

 

One Asia Lawyers
One Asia Lawyersは、ブルネイを除くASEAN全域及び東京にオフィスを有しており、日本企業向けにASEAN地域でのシームレスな法務アドバイザリー業務を行っております。

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