2020.07月号

ASEANビジネス法務 最新アップデート

EUベトナム自由貿易協定(EVFTA)いよいよ発効

ASIAビジネス法務 最新アップデート

はじめに

 ベトナム国会は6月8日、EUベトナム自由貿易協定(EU-Vietnam Free Trade Agreement:EVFTA)を批准しました。欧州評議会も3月30日に同協定の批准に関する決定を承認しており、同協定は8月1日に発効する見通しです。本稿では関税とサービス分野の市場開放(※1)に関して簡単にご紹介します。

1.EVFTAの概要

 EVFTAは、ベトナムとEUの貿易自由化を目指した協定であり、関税、原産地規則、サービス、政府調達、知的財産などの分野で互いに規制緩和に向けた取り決めをしています。

2.関税撤廃

 ベトナムはEUに対して協定発効時に、品目数ベースで48.5%(金額ベースで64.5%)の輸入関税を即時撤廃、7年後に91.8%(同97.1%)、10年後に98.3%(同99.8%)の関税を撤廃する予定です。

 品目数ベースで残る1.7%については、10年以上経った後の撤廃としているか、WTOコミットメントに従ったクオータ制度が適用されます。

 EUはベトナムに対して協定発効時に、品目数の85.6% (金額ベースで70.3%)で輸入関税を即時撤廃し、発効から7年後に品目数の99.2%(同99.7%)で関税を撤廃としています。

 金額ベースで残る0.3%の部分についてEUは、クオータ内であれば関税率0%としており、ベトナムからEUへの輸出はほぼ100%で輸入関税が撤廃されることになります。

 ベトナムが結んでいるFTAの中で、相手から最も高度なコミットメントがなされている協定であり、EUがベトナム第2の輸出相手であることからも、非常に大きな意味を持ちます。

3.サービス分野の市場開放

 ベトナムはEVFTAにおいて、次のようなコミットメントをしています。

  • 銀行サービス:協定発効から5年の間に、EUの金融機関がベトナムの株式商業銀行2行について資本金の49%まで外国側保有率を引き上げることについて、有利に検討する(国が現在支配株を保有するBIDV、Vietinbank、Vietcombank、Agribankは含まない)。
  • 通信サービス:CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)と同等の条件をコミットメントしている。インフラ構築を伴わない付加価値通信サービスについては、5年後に外資100%の会社設立を認める。
  • 流通サービス:協定発効から5年後に「経済需要テスト」 (※2)を撤廃する。差別待遇しないことを前提に流通システム計画を実施する権利は留保する。

4.おわりに

 ベトナムが諸外国と結んでいる投資・貿易協定の中で、近年締結されて特に影響力が大きいものとしてはCPTPPと、このEVFTAが挙げられるかと思います。

 CPTPPは日本も加盟しているため認知度が高いと思いますが、ベトナムとEUの自由貿易協定であるEVFTAも、ベトナムで活動する日系企業が恩恵を受けるものです。

 ベトナム政府は、EVFTA発効後5年間で国内総生産 (GDP)は2.18%~3.25%増加し、EU向け輸出は2025年までに42.7%増加すると試算しています。

 EUがASEAN諸国と結んだFTAはベトナムが2ヵ国目であり、EUのベトナムに対する期待が伺えるとともに、ベトナムにとっては対EU関係においてASEAN諸国を一歩リードするものになるといえそうです。

※1 http://evfta.moit.gov.vn/
※2 Economic Needs Test:外資小売り企業が2店舗目以降を出店する際に必要な審査

寄稿者プロフィール
  • 山本 史 プロフィール写真
  • 山本 史

    One Asia Lawyersベトナム事務所に駐在。ベトナム国内で10年以上の実務経験を有する。ネイティブレベルのベトナム語を駆使し、現地弁護士と協働して各種法律調査や進出日系企業に対して各種法的なサポートを行う。

  • One Asia Lawyers
    One Asia Lawyersは、ブルネイを除くASEAN全域、南アジア及び東京にオフィスを有しており、日本企業向けにASEAN及び南アジア地域でのシームレスな法務アドバイザリー業務を行っております。2019年4月1日より南アジアプラクティスを本格的に開始。

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    Tel:+84 28 3822 4539

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