2020.12月号

ASEANビジネス法務 最新アップデート

海外インフラプロジェクトの法的留意点-アジア新興国編-(1)

ASIAビジネス法務 最新アップデート

今年7月7日、国土交通省より「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画2020(以下、行動計画」※1が発表された。行動計画によれば、新興国を中心とした世界のインフラ需要は膨大で、急速な経済成長と都市化を背景にさらなる需要の拡大が予想されており、日本はその需要を取り込む必要がある。

そして、アジアおよびアフリカ地域を中心として、日本が受注を目指すべき80のプロジェクトが示されている。

行動計画の通り、「日本の持続的な経済成長」「相手国の経済発展と社会的な課題解決への協力」「地球規模の課題解決への貢献」という3つの意義に共感し、日本のインフラ技術やノウハウ輸出が、将来に向けた外貨獲得の有効かつ重要な手段、手法であるということを前提に、著者の10年間に渡るアジア新興国における海外インフラプロジェクトの経験から、その主要な法的論点や問題点について複数回に分けて解説する。

なお、中国のアジアインフラ投資銀行や一帯一路の影響を踏まえると、新興国を中心としたハード面でのインフラ開発、支援は質量の観点から限界を迎えていると感じる側面もある。

ハード面のみならず、IoT、AI、5G、スマートシティ等のソフト面も含めて日本の先端技術を活用した高付加価値かつ複合的なインフラパッケージ輸出に向けて、各国のPPP法、スマートシティ関連規制、データ規制、その他航空法、電力関連法令、港湾関連法令等についても紹介していく予定である。

オフショアからのインフラプロジェクトの実施の可否

・オフショアモデルを巡る法的規制

まず、日本から国外にサービスを提供する際、①現地に拠点を設置しないオフショアモデル、②現地に拠点を設置するオンショアモデルが存在している。

新興アジアでのプロジェクトでは日系商社、建設会社、エンジニアリング会社やロジスティクス会社等から、プロジェクト実施国において現地法人や支店等を設立せずにサービス提供を行うことが可能かどうかの相談を最初に必ず受ける。

特にカンボジア、ラオス等のプロジェクトに関しては継続的な案件が存在するか予見できないため、オフショアモデルで実施できるかどうかは問題となる。日系商社や建設会社等は過去、多様な国、地域で現地法人等を設立し、プロジェクトを遂行してきた経緯があるが、その運営維持や清算にかかるコスト等が多額になる傾向があり、コスト削減の観点からオンショアモデルを避けてプロジェクトを実施したいという事情がある。

他方、カンボジアやミャンマーにおいてはこれまで、無償資金協力※2によるプロジェクトが多数実施されてきた。その無償性から、プロジェクトを実施する企業体は、コンプライアンスに関するリスクをあまり考慮してこなかった傾向がある。

つまり、対象国の政府は無償で恩恵に与れることから、そのプロジェクトを実施する企業をコンプライアンス違反等で摘発するインセンティブが生じなかった。

しかし最近では、アジア新興国においても有償資金協力※3や官民連携(PPP)によるプロジェクト実施が主流となってきており、プロジェクト実施国の当局から企業体のコンプライアンス遵守状況等が適切にチェックされるようになってきている。そのような事情から、コストとコンプライアンス上のリスクを総合的に勘案した上で、オフショアモデルでのプロジェクト実現可否を検討する必要がある。

次回から主要な論点と留意点について解説する。

 

※1 国土交通省インフラシステム海外展開行動計画2020 https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo05_hh_000232.html

※2 外務省 無償資金協力に関する取り組み    https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/keitai/musho/index.html

※3 外務省 有償資金協力に関する取り組み https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/keitai/enshakan/index.html

寄稿者プロフィール
  • 藪本 雄登 プロフィール写真
  • 藪本 雄登

    One Asia Lawyersの前身となるJBL Mekongグループを2011年に設立、メコン地域流域諸国を統括。カンボジア、ラオス、タイ、ミャンマー、ベトナムで延べ10年間に亘る駐在・実務経験を有し、各国の現地弁護士と協働して各種法律調査や進出日系企業に対する各種法的なサポートを行う。インフラプロジェクトについては、タイ、カンボジア、ミャンマーにおける道路敷設や鉄道、上下水道、高速道路のメンテナンスなどの開発プロジェクト、ラオスでの電力開発案件等も支援。

    E-mail:yuto.yabumoto@oneasia.legal

  • One Asia Lawyers
    One Asia Lawyersは、アジア全域にオフィスを有しており、日本企業向けにアジア太平洋地域でのシームレスな法務アドバイザリー業務を行っております。2019年4月1日より南アジアプラクティス、2020年11月よりオーストラリア、ニュージーランドプラクティスを本格的に開始。
  • 【One Asia Lawyersグループ タイオフィス】
    Unit2301, 23rd Floor, Interchange 21 Building, North-Klongtoey, Wattana, Bangkok, ThailandTel:+66-61-780-1515

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