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中国人のコンドミニアム購入

さらに減速する見通し

 タイに本社を置き、主に外国人向けの不動産投資・仲介などのサービスを提供するエンジェル・リアルエステート・コンサルタンシーは、バーツ高、地価の上昇に伴う割高な物件、供給過多、中国政府による資本流出抑制措置などのマイナス材料を背景に、バンコクのコンドミニアム市場を牽引してきた中国人の購買意欲が減退していることを明らかにした。

 バンコクポストによると、2014年に設立された同社は、中国人購入者のみを対象とした販売代理店としての役割も担う。昨年暮れから減速が顕著となり、今年1~5月の販売件数は5百件と前年の9百件から大幅に減少。通年では前年比50%減の12百件と予測する。

 バーツは対人民元で5年前と比べて20%も上昇しており、当時は一戸当たり5百万~1千万バーツの物件が人気だったが、リスク回避で2百万~6百万バーツが物色の対象となっている。流動性資産としての魅力が失われつつあり、8~14%とより年間利回りが高い日本などに投資先をシフトしているという。バンコクの利回りは5年前の6~7%から現在3~4%に落ち込んでいる。一方、供給過多で賃料を上げられず、2%という物件もある。

不透明な市場の行方

 不動産サービス大手のコリアーズ・インターナショナル(タイランド)が発表した「2019年第1四半期レポート」によると、タイ中央銀行(BOT)によるLTVレシオ(借入金/資産価値比率)規制や土地建物税の導入、不透明な総選挙後の行方が、バンコクを買い手市場に変えた。開発業者は新規プロジェクトを棚上げし、LTV規制前に売れ残った物件の処分に踏み切った。 

 新規供給数は8953戸で、前年同期比で36%減。バンコク郊外が5583戸と6割強を占めた。東部とビジネス中心街区(CBD)がそれぞれ1686戸、1055戸だった。BTS(高架鉄道)とMRT(地下鉄)の沿線エリアでの開発は引き続き活発に行われている。

 需要は鈍く、購入率は新規供給数の52%に留まった。ただ、割安で立地条件の良い物件は80~100%を達成。一平方メートル当たり10万~20万バーツが好調だった。

総選挙の開票結果が発表され、コンドミニアム市場は第2四半期に息を吹き返すとの見方もあるが、全体的なコンドミニアム市場は縮小する見通しだ。

国境・通過貿易、堅調続く

総輸出額は不振

 タイ経済は減速気味で、5月の輸出額(国際収支ベース)は前年同月比7・2%減(金を除くと6・1%)と5ヵ月連続でマイナスとなった。特に、石油関連製品、乗用車・商用車・同部品、電子製品、米とゴム、農産品が落ち込んだ。ただ、エアコン・テレビ、農産物、二輪車と自動車用タイヤは伸びた。輸入額は個人消費が堅調だったが、国内の民間投資の減速で同0・2%減となった。

 米中貿易・ハイテク戦争を背景に、中国からタイを含むASEANに製造拠点を移転する動きが加速しており、第2四半期に回復するとの見方があるが、タイ中央銀行(BOT)は6月26日に今年通年の伸び率見通しを当初の3%から横ばいに下方修正した。

 全体の輸出の見通しは暗いが、国境・通過貿易は堅調だ。商務省外国貿易局によると、1~5月の貿易額は前年同期比2・3%増の5774億バーツだった。輸出は同0・3%減の3213億バーツだったが、輸入が同4・9%増の2561億バーツと、貿易黒字は653億バーツ。

 うち、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアとの国境貿易は同0・6%増の4465億バーツで、同局のアドゥル事務局長は、電子通関システムの採用後に貿易円滑化手続きが大幅に改善されたと述べた。

 二国間で取引される製品が、第三国(シンガポール、ベトナム、中国南部)を経由して輸出入される通過貿易は、同10・4%増の1109億バーツ。内訳は中国南部が491億バーツ、ベトナムが331億バーツ、シンガポール287億バーツだった。

 アドゥル事務局長は、バーツ高や世界的な景気後退、米中貿易・ハイテク戦争が引き続き、タイの6月の国境・通貨貿易を圧迫する要因になると慎重な姿勢を示した。

 タイはカンボジア、ラオスとの鉄道・道路建設に力を入れている。タイ東部アランヤプラテートとカンボジアのポイペトを結ぶ鉄道が45年ぶりに開通。ラオスとは6月末に道路整備と鉄道路線の延伸で合意した。タイ周辺諸国経済開発協力機構(Neda)によると、ウタラディット県国境検問所と首都ビエンチャンを結ぶ幹線道路のアスファルト舗装と2車線化。鉄道はタイのノンカイ駅とビエンチャン駅を直接結ぶ計画で、物流の向上が期待される。

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