PwC タイビジネススタディ

PwC タイ税務スタディ ロイヤルティ(使用料)に係る税務

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土谷豊弘
Director
一般事業会社を経て1997年中央監査法人監査部に入所。会計監査、株式公開支援業務に従事した後、2004年4月よりPwCタイ法人バンコク事務所に勤務。
日系企業に対して会計監査、税務関連業務の他、法務、投資、M&Aといった各種コンサルティング業務等、多岐に渡るアドバイスの提供、サポートを行っている。日本国公認会計士。

+66 (0)2 344 1217( 直通)、+66 (0)81 376 5785( 携帯)
toyohiro.tsuchiya@th.pwc.com

<質問>

会社Aは日本の会社と「技術支援契約」を締結し、日本の会社は会社Aに対して製造に掛かる技術コンサルティング、技術情報(ノウハウを含む)、技術支援を提供します。会社Aは、日本から送り込まれる専門家の旅費、食費、宿泊費も含めてこの契約で規定される対価を支払います。この対価の支払に源泉税は課されますか?

1.外国法人のタイ国での課税

歳入法典第70条によると、タイ国で事業を営んでいない外国法人が、タイ国からあるいはタイ国内において特定の所得を得た場合には、当該所得に関し源泉税が課されます。 所得の支払を行う会社は上記税率に基づき源泉徴収を行い、支払月の翌月7日以内に所定の書式 (Por・Phor・54)を用いて納税を行わなければなりません。源泉漏れ、納税漏れがある場合には、支払会社は月1.5%の延滞税とともに納税額を納めなければなりませ ん。
但し、これらの源泉徴収義務には、外国法人の登記国とタイ国の間で締結された租税条約(DTA)により、次の2通りの救済措置があります。

①特定の所得に対する軽減源泉 税率の適用
②事業所得とされる所得について、タイ国に存在する恒久的施設(PE:Permanent Establishment) を通じて獲得した場合を除き、タイ国では課税されない

ここでPEとは、「事業の全部または一部が行われる一定の場所」をいい、外国法人が以下の条件に当てはまる場合にはタイ国にPEを有しているとみなされます。

◎ 会社がタイ国に事業の活動拠点を有している(例:営業事務所、支店)
◎ 会社がタイ国に従属代理人を有している(例:専ら特定の会社のために活動する代理人)
◎ 会社がタイ国において租税条約に定める期限を越えて活動している(例:3ヵ月を超えて行われる建設、据付工事、6ヵ月を超える役務の提供)

なお、租税条約の救済措置の適用は納税者の判断に委ねられます。つまり、国内法の適用が租税条約の適用より納税者にとって有利であれば、租税条約の適用を選択する必要はありません。

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2.質問の回答

上記により、技術支援による外国法人の所得が事業所得に該当するかロイヤルティ(使用料)に該当するかの判断は、税務上、非常に重要です。すなわち、ロイヤルティ (使用料)に該当する場合は源泉徴収対象取引となりますが、技術支援の役務提供の対価(サービス料) であれば、日タイ租税条約の第7条に規定される事業所得として、タイ国で課税されることはありません。
日タイ租税条約の第12条にお いて、ロイヤルティは「著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、または産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受領するすべての種類の支払金」と定義されています。ロイヤルティに対する源泉税率は、日タイ租税条約により15%を限度とするものとされています。
タイ国歳入局の見解では、ノウハウ提供の色濃い技術支援サービスからもたらされる所得は、ロイヤルティとして扱われます。これは、歳入局としては、通常の支援形態は 「ノウハウの提供」が契約の必須部分であり、「技術支援の役務提供」は単なる追加要素に過ぎないと考えているためです。
契約書上、主たる内容と対価が明確に「ノウハウの提供」と「技術支援の役務提供」に区分されている場合は、「ノウハウの提供」に対する支払はロイヤルティとみなされ、 「技術支援の役務提供」の支払はサービス料として日タイ租税条約における事業所得とみなされます。 また、契約書上「ノウハウの提供」が別契約で明記されている場合は、 技術支援契約における支払は、ロ イヤルティ(使用料)ではなく、技術支援の役務提供の対価(サービス料) ということになります。
しかしながら、「ノウハウの提供」 と「技術支援の役務提供」に明確な区分なく一つの契約書上に記述され、その支払もまとめて行われている場合には、その支払総額がロイヤルティとみなされる可能性があります。また、ノウハウの提供の色濃い技術支援契約に基づき専門家がタイ国に派遣される場合に発生した旅費、食費、宿泊費相当の支払も、当該契約の対価の一部とみなされロイヤルティとして源泉税が課される可能性があります。 質問のケースでは、契約書上、「ノウハウの提供」と「技術支援の役務提供」が明確に区分されず、その支払も一つにまとめて行われています。 したがって、全額ロイヤルティとして扱われ、歳入法典第70条、あるいは日タイ租税条約の救済を受けた場合でも同第12条により、15%の源泉税が課されます。

このコラムは「時事速報BANGKOK」で以下年月に掲載されたものです。
◎2015年11月4日

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PricewaterhouseCoopers
Legal & Tax Consultants Ltd.
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