2014.11月号

PwC タイビジネススタディ

ミャンマー個人所得税の基礎知識|PwCタイ

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PwCタイ シニアマネージャー桑木 愛子
一般事業会社を経て、2004年2月よりプライスウォーターハウスクーパースタイ事務所に
勤務。

2011年3月の民政移管と、それに伴う米国の経済制裁停止を受け、アジア最後のフロンティアとして日系企業からも注目を集めるミャンマー。特に隣国のタイからは、視察などで訪れる機会のある方も多いかと思います。このようなミャンマーを訪れる出張者については、ミャンマーに会社を設立し、本格的にビジネスを開始する前であっても、個人所得税の納付義務が生じる場合もあります。そこで、今回は、ミャンマーの個人所得税の概要について、タイとの比較も交えて、ご紹介します。

納税義務者・課税範囲

ミャンマー個人所得税の納税義務者は、居住者と非居住者に分けられ、外国人のミャンマー居住者とは、①課税年度(*1)におけるミャンマー滞在日数が183日以上の者、もしくは②ミャンマー国内に主たる居所を有している者と定義されます。②については、
ミャンマー滞在日数に関係なく、ミャンマー外国投資法『Myanmar Foreign Investment Law:MFIL』に基づき設立された企業の駐在員は、ミャンマー国内に主たる居所を有しているものとして、ミャンマー居住者と判断されます。居住者はミャンマー国内源泉所得およびミャンマー国外源泉所得に対して全世界所得課税(*2)、非居住者はミャンマー国内源泉所得に対して、ミャンマーで課税されます。所得の源泉地(所得が発生した国)は、給与所得の場合、所得の支払地や所得を負担する法人の所在地に関係なく、各個人の勤務地で判断され、ミャンマーで就労したことにより得た所得は、ミャンマー国内源泉所得とみなされます。従って、ミャンマー法人に所属しない短期出張者であっても、ミャンマーでの出張期間中に得た所得に対しては、ミャンマーで納税義務が生じます。
上記の原則は、居住者の定義を除いて、タイと同じです。

短期滞在者免税

期滞在者免税上述のように、ミャンマー国内法では、1日の就労であっても納税義務が生じます。ただし、短期滞在者については、居住国において全世界所得課税とされる場合が多く、所得の源泉国でも課税が生じると二重課税の状況となってしまいます。これを排除するため二国間で租税条約を締結し、一定の条件が満たされれば、源泉国での所得税課税を免除する措置がとられていますが、現在、ミャンマーと発効済みの租税条約を有している国は、英国、マレーシア、シンガポール、ベトナム、インド、韓国、タイのわずか7ヵ国です(タイは58の国・地域)。従って、日本を含め、これら7ヵ国以外の国からの出張者については、原則、1日の就労からミャンマーでの課税が生じます。
一方、タイとミャンマーは租税条約を締結しているため、タイからの出張者については、以下の条件全てが満たされる場合、ミャンマーでの所得税課税を免除されます。

①出張者が課税年度(4月1日〜3月31日)において合計183日を超えてミャンマーに滞在しないこと
②出張者の給与がタイ法人より支払われること
③出張者の給与がミャンマー法人またはタイ法人がミャンマー国内に有する恒久的施設『Permanent Establishment : PE』(※3)によって負担されないこと

(*1)ミャンマー個人所得税の課税年度は、4月1日から3月31日です。
(*2)ただし、現時点では、居住者である外国人については、実務上、ミャンマー国内源泉所得のみが課税対象とされています。
(*3)タイ・ミャンマー租税条約では、①支店・事務所、②6ヵ月を超える建築工事現場、建設・据付・組立工事またはこれらに関連する監督活動、
③タイ法人に代わって契約を締結する権限を有し、この権限を反復して行使する代理人などと定義されています。

課税対象となる給与所得の定義

給与・賞与だけでなく、いわゆるフリンジベネフィットも課税対象となる給与所得の定義に含まれます。また、雇用者が従業員に代わって負担する所得税も、課税所得に含まれるため、ネット保証の形態をとっている場合は、タイと同様に、グロスアップ計算が必要となります。ただし、家賃手当については、①総所得の10%(家具なし)または12.5%(家具付)と②実際の家賃のいずれか低い方を課税所得として扱うという優遇措置がとられています。

申告・納付手続

ミャンマー法人所属の出向者と出張者によって申告・納付手続は異なります。
まず、ミャンマー法人所属の出向者については、会社が給与から所得税を源泉徴収し、翌月7日までに税務当局へ申告・納付します。そして、最終月である3月度の申告において、過不足を調整し、翌年6月末までに源泉徴収の年次報告を行うという日本の年末調整と同じような仕組みがとられています。
一方、源泉徴収の対象とならない出張者については、個人の義務として、月次または四半期ごとの予納が義務付けられますが、実務上は、年度末である3月末までの一括申告・納付も認められています。
タイと異なり、出張者・出向者ともに、課税年度中(3月末)までに全ての所得について申告・納付が要求される点、注意が必要です。

税率

個人所得税率は、居住者は累進税率、非居住者は一律35%です。2014年の改正税法により、2014年度(2014年4月1日〜2015年3月31日)以降、居住者に適用される累進税率が従前の0〜20%から0〜25%へ引き上げられました。

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所得控除

ミャンマー居住者については、課税所得合計の20%の基礎控除(1000万チャットが上限)に加えて、配偶者控除50万チャット、子供控除1人あたり30万チャットの扶養家族控除が認められます。

まとめ

ミャンマーでは、本格的な個人所得税の徴収体系が確立されたばかりのため、頻繁に法令が改正されるだけでなく、法律と実務が必ずしも一致していないケースが散見されます。従って、最新の情報を適宜入手することが必須です。
また、現時点では、日本と租税条約が締結されていないため、日本からの出張者については、1日の就労からミャンマーでの納税義務が生じる点、留意する必要があります。

 

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Aiko Kuwaki
Senior Manager
aiko.kuwaki@th.pwc.com
Napaporn Saralaksana
Senior Manager
napaporn.saralaksana@th.pwc.com
PwC International Assignment Services (Thailand) Ltd.
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