新たな視点で時代の動きを読み取る ASEAN経営戦略

コロナ禍の消費者価値感変化を前提とした戦略策定(前編)

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コロナ禍以前から、東南アジアの消費者はリープフロッグ的な変化を見せてきた。

高いデジタルリテラシーを持ち、スマートフォンやSNSを日常生活やビジネスでも使いこなす。Eコマース購買も高い成長率を見せてきた。その傾向が、コロナ禍を経て一気に加速したことはご存知の通りである。

食品デリバリーは一般化し、日用品の買い物代行も浸透した。今後、東南アジアの消費者はどう変わっていくのか。それを知ろうと、とりあえずといったかたちで消費者調査を行う企業は多い。

これまでのように商品のローカライズやプロモーションの調整のためであればそれで良いかもしれない。だが、今は東南アジアの消費価値観が根底から変わり、それに伴いビジネスモデルを大きく変革しなければならない時を迎えている。

弊社ローランド・ベルガーは、コロナ禍において消費者の基本的価値観を分析し、これからの時流に備えた戦略策定支援を多く実施している。今回から、二回に分けてそのアプローチの概要をご紹介したい。

根幹的な価値観の変化を捉える
RBプロファイラーによる消費者分析

図表1は、変革期のクライアントに向けて弊社が取り得る、典型的な戦略策定アプローチだ。

ステップ1として、まずは消費者の分析を行う。ここでは表層的な購買行動の定量化ではなくその裏側にある、より基本的な価値観の変化を捉えていく。

コロナ禍から4年間(~2025年)の消費者の変化が、これまでにないほどドラスティックなものになることは想像に難くないだろう。その動向を捉えるためには、「今」の表面的な購買行動を分析するだけでは不充分である。その分析結果は半年後には大きく変わっているからだ。  弊社では、RBプロファイラーという独自ツールを用いて、消費者価値の分析を行う。RBプロファイラーでは19の普遍的な価値観(例:自由、情熱、仲間、スリル、効率性、正義、シンプル、コスト…等)に基づいて、人々がどの価値観にどの程度の強さを感じているかでセグメンテーションをしていく。

例えば、2010年頃の日本においては効率性、コスト、仲間といった価値観を重視する「フォロワー層」が大きかった(図表2)。

2010年頃の消費者クラスター(日本)

彼らは、マスメディアで紹介される商品やサービスに信頼を置き、「皆と同じ」を好む。大多数をこのフォロワー層が占めている限りは、マスを抑える商品、プロモーションが戦略の肝であった。

だが、その後、価値観は多様化していく。

東日本大震災では社会や家族を強く意識するようになり、コロナ禍においては安全や節約も強調されることとなった。

一方で個人の在り方を重視する価値観も高まってきた。セグメントとしては、フォロワー層が消失し、「社会志向層」「人間・家族重視層」「倹約層」「先進・革新志向層」等、多様な消費者クラスターが誕生することとなる(図表3)。

2025年の消費者クラスター(日本)

彼らに対して、画一的なマスアプローチが有効でないことは言うまでもない。ターゲティングを明確にしたうえで、それぞれの価値観、そしてその表れである購買行動を上手く捉えるカスタム戦略が求められるのだ。

ここ東南アジアでも、価値観の変化による消費者セグメントの多様化が既に進んでいる。  元来、多民族、多国籍の地域だという複雑性もある。そこに、民族性・国民性を超えた「個」の多様性が乗じられるため、複雑さは日本以上だ。

かといって、闇雲にセグメントを細かくすればいいというものではない。本質的な切り口を見極めて、適切にセグメンテーションしなければ、正しい戦略には至れない。その入口をRBプロファイラーでサポートすることが可能なのだ。

次号では、RBプロファイラーで行った消費者分析をもとにした、個別企業に対する機会と脅威の抽出、そしてその機会と脅威を前提とした戦略策定の解説を行う。

寄稿者プロフィール
  • 下村 健一 プロフィール写真
  • Roland Berger下村 健一

    一橋大学卒業後、米国系コンサルティングファーム等を経て、現在は欧州最大の戦略系コンサルティングファームであるローランド・ベルガーのアジアジャパンデスク統括に在籍(バンコク在住)。ASEAN全域で、消費財、小売・流通、自動車、商社、PEファンド等を中心に、グローバル戦略、ポートフォリオ戦略、M&A、デジタライゼーション、企業再生等、幅広いテーマでの支援に従事している。

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