2020.09月号

サシン経営大学院日本センター 藤岡資正所長が聞く対談

第8回 AI時代に勝ち抜くクリエーターに求められる教養

第8回 AI時代に勝ち抜くクリエーターに求められる教養

 実は日本有数の起業家輩出数を誇るデジタルハリウッド大学。デジタル分野の次代を担う人材育成について、杉山学長に同校の教育システムの特色などを聞かせていただいた(聞き手:藤岡資正)。

AIの時代には「これは楽しい」と思える仕事を

1990年頃から、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで僕らはずっと時代の先を見てきて、「21世紀になったら、AI(人工知能)がとんでもないことになる」と予見してきました。

ロボットとAIは人間が嫌だと思っている仕事を全てやってくれます。では、人間は何をするのでしょうか?「楽しいと思える仕事」をやれば良いのです。大きく構造が変わることを予見しながら、この大学を始めました。3年程前からAIという言葉が世間一般に広く知られ、追い風が吹いてきました。

実業界へのインパクトを高める:若手起業家養成

本学の卒業生が世界中で活躍しています。彼らを見て、「この人、面白いことやってる」「どうしてこんなことができるんだろう」となった時に、我々の大学や大学院の修了生だと知ってもらうことが重要と考えています。

経済産業省が毎年発表している大学発ベンチャー創出数というランキングがあり、本学の起業数は全国11位になっています。東京大学から始まって、私立では早稲田、慶応、そして本学が続きます。学生の規模が大幅に違うのにです。これは一つの指標として良かったと思っています。

もちろん、背景にはデジタルと関連する分野は起業しやすいことが挙げられます。日本はICT分野にたくさん空き地があるんです。まだまだ可能性があります。

学生には入学当初から、とにかくプロみたいに色々作れる技術を教えることを優先しています。でもやっているうちに自分の知識が薄いことに気付き、深い作品が作れない壁にぶち当たることがあります。そこで「教養を高める」必要性を感じます。

単位のためではなく自分の作品をより深くするために、教養を身に付けたいと思う学生が多くなります。特に4年生は顕著で、単位は足りているのに教養のためにたくさんの科目を履修する学生が多いです。

学生には「人類の知は意外と広い」ということを教えます。概論としてなんとなくやるとつまらないので、一番面白いところだけを教えています。そこに引っ掛かったら、学生はネットでも本でもいくらでも自学自習できます。これが将来のクリエーター達の引き出しになるのです。

ハングリーなアジア人学生に感服

中国からの学生はできるだけ日本に残りたいと思う一方で、タイなど東南アジアの学生たちは総じて、最後は自分の国に戻って事業を起こし、家族や親戚、さらに友人、地域のために何かをやりたいと思っている人が多い印象です。

彼らは「本当によく学ぶな」と感心するほど、真面目に勉強します。アルバイトと両立させ、課題もこなしながら4年間で卒業するのは至難の業です。最近ではネットが発達しているので、東南アジアの学生たちも日本人と同じように、幼いころから映画、アニメ、音楽にも触れて育っています。特に自分の好きなことはとてもよく知っているのです。先進国との差はないといっても良いでしょう。

対談を終えて by 藤岡 資正 氏

杉山学長が言われるリベラルアーツ教育は、日本の大学の「一般教養」のようなものではなく、「人間の本質について深く学ぶ(自らと向き合う)」ことを通じた「人間力」の醸成を図るものである。今まさに、コロナ禍において求められているのは、正解のない状況で自らのプリンシプルに基づいた生き方であり、自律的な姿勢である。「学ばせるのではなく、学びたいと思わせる」、杉山学長が一般教養を専門科目の後に配置する理由はここにある。

杉山知之
写真撮影:石田直之氏

略歴

杉山知之
デジタルハリウッド大学学長。日本大学理工学部建築学科卒業、大学院理工学研究科修了後、日本大学理工学部助手となり、コンピューターシミュレーションによる建築音響設計を手がける。その後、米MITメディアラボへ客員研究員として3年間派遣され、1994年にデジタルハリウッド株式会社を設立。2004年、05年にデジタルハリウッド大学院大学、同大学を続けて開設し現在に至る。

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