SBCS タイ経済概況

Vol.1 意外と知られていないSMART VISA

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タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)は2月、2019年通年の経済成長率が前年比+2・4%であったと発表した。過去5年間で最低の伸びとなった。また20年の経済成長率については、新型コロナウイルス感染や干ばつ、今年度の国家予算案の成立遅れ等に影響を受け、+1・5%~2・5%になるとの見通しを示している。

ArayZ読者の皆様、はじめまして。SBCSの長谷場です。日頃は三井住友銀行のお取引先様を中心にタイに関する情報提供をさせていただいております。今回から隔月で本欄のコラムを担当させていただくことになりました。よろしくお願いいたします。

さて、タイで働いている皆様は何らかのVISAを取得されていると思いますが、2018年2月から始まったSMART VISAをご存じでしょうか?ご存じの方でも「申請要件として最低月給20万バーツが求められる取得困難なVISA」という認識をお持ちかもしれません。確かにこの制度が始まった当初はそうでした。

しかし現在は、高度技術者であれば給料の条件が緩和されています。スタートアップ企業と雇用契約がある場合、または定年退職されて一般企業に勤務する場合はボーナスや手当を含めて月給5万(年収60万)バーツ、一般企業に勤務する一般の方(定年退職されていない方)の場合は月給10万バーツとなっています。

申請者はタイ政府が指定するターゲット産業に従事し、テクノロジーを使用して製品やサービスの開発、製造、提供をしなければならないという条件があります。しかし、多くの日系企業が奨励を受けているタイ投資委員会(BOI)のターゲット産業よりも広範囲な事業がSMART VISAのターゲット産業となっています。このため、BOIの奨励対象事業ではなくても条件に当てはまれば、SMART VISAの対象となる可能性があります。

こう書くと「BOIでVISAをもらっているから今のままで十分」という方もいらっしゃると思います。しかし、このSMART VISAの特徴は配偶者やお子様もVISAを得ることができ、さらに「ご本人、配偶者、高度技術者の子供も18歳以上であれば就労許可書(Work Permit)なしでタイでの勤務が可能。90日レポートは1年毎になる」という他にない特典があることです。

あまり知られていないためか、このVISAを取得した日本人は20年1月末時点で22人しかいません。自動化・ロボット産業分野、バイオ燃料・バイオ化学産業分野などで実績が出ていますので、該当する方や定年退職した技術者の雇用を考えている経営者の方は検討されてみてはいかがでしょうか。

寄稿者プロフィール
  • 長谷場 純一郎 プロフィール写真
  • SBCS Co., Ltd.
    Manager, Business Promotion Division
    長谷場 純一郎

    奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、10年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。12年から18年までジェトロ・バンコク勤務。19年5月より現職。

SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。

【免責】当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。当レポートは単に情報提供を目的に作成されており、その正確性を当社及び情報提供元が保証するものではなく、また掲載された内容は経済情勢等の変化により変更される事があります。掲載情報は利用者の責任と判断でご利用頂き、また個別の案件につきましては法律・会計・税務等の各面の専門家にご相談下さるようお願い致します。万一、利用者が当情報の利用に関して損害を被った場合、当行及び情報提供元はその原因の如何を問わず賠償の責を負いません。

 

1月〜3月 ○ 経済・政治関連トピック 2020

経済

1月13日、ソムキット副首相が2019年の投資申請統計を発表した。新規申請額は7,561億バーツで、目標額の7,500億バーツは達成したが、大型投資のあった前年からは16.2%減少となった。申請件数は1,624件。投資エリア別では東部経済回廊(EEC)地区が申請件数506件、申請額4,449億バーツで全体の59%を占めた。

産業別では電気・電子が805億バーツと最も多く、自動車・自動車部品が740億バーツ、石油化学が401億バーツでそれに続いた。また、タイ投資委員会(BOI)のドゥアンジャイ長官は、国別の海外直接投資額では中国が申請額2,620億バーツで最も多く、次いで日本が731億バーツ、香港が363億バーツだったと発表した。

タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)が人口統計に関するデータを発表。これによれば、タイの生産年齢人口(15~59歳)は現在の4,326万人(総人口比率65%)から、40年には3,650万人(同56%)に減少する。

また、60歳以上の人口1人に対する生産年齢人口は、現在の3.6人から40年には1.8人となる。総人口は、28年に6,720万人でピークとなり、それ以降は毎年0.2%ずつ減少、40年に6,540万人まで減少する見込み。

バンコク日本人商工会議所(JCC)は2月4日、タイ国日系企業景気動向調査の結果を発表。19年下半期(19年7~12月)の景況感を示す業況判断指数(DI:業況の改善を見込む企業の割合から悪化とみる企業の割合を差し引いた値)の見通しは▲38と、洪水のあった11年下半期以来の大幅なマイナスとなった。

業種別では自動車産業を含む「輸送用機械」が▲78と最低値で、製造業(▲49)は非製造業(▲28)よりも景況感が低水準となった。また、20年上半期のDI見通しは▲18と、19年下半期よりも改善が見られるものの、調査の実施時期は19年11月1日~12月3日であり新型コロナウイルス感染の影響は加味されていない。

タイ投資委員会(BOI)は2月6日、大型案件から草の根経済振興事業まで投資を誘致する、複数の投資促進策を承認した。中でも大型プロジェクト向け税務恩典は、19年9月に承認された投資促進策「タイランド・プラス」を補足する内容のもの。

基本恩典で5年~8年の法人税免除恩典を得られる事業に対し、企業が20年末までに5億バーツ以上、もしくは21年末までに10億バーツ以上の投資を実行する場合、追加で5年間の法人税50%軽減を得られる。申請受付期限は20年12月30日まで。

■ NESDC経済予測値(2020年2月17日発表)
NESDC経済予測値(2020年2月17日発表)
*(出所)タイ中央銀行

政治

20年度(19年10月~20年9月)予算案がワチラロンコン国王の承認を得て、2月26日付で官報にて掲示、執行可能となった。

20年度の歳出は3兆2,000億バーツで、歳入が2兆7,310億バーツ、財政赤字は4,690億バーツ。同予算案は当初から国会での審議が遅れており、予算年度開始から大幅に遅れての成立となった。

タイ憲法裁判所は2月21日、野党第二党の新未来党に解党を命じる判断を下した。また、タナトーン党首ら党幹部16名の政治活動を10年間禁止した。選挙管理委員会が、新未来党がタナトーン党首から結党時に1億9,100万バーツの融資を受けたのは違法であるとして、解党を申し立てていた。

これに対してタイ憲法裁判所は、タナトーン党首から新未来党への資金提供は政党法に違反すると判断。同党は同日付で解党となった。3月8日、同党の後継となる前進党が結成された。19年3月の総選挙にて新未来党が獲得した81議席を下回るものの、野党では第二党の議席数となる見込み。


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タイ 2020年最新版 インフラ計画進捗状況


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