SBCS タイ経済概況

Vol.11 在宅勤務が通常勤務になるか?

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バンコクでは11月に外出禁止令が終了し、条件付きながらお酒を店内で飲めることになり、かなり通常の状態に戻ってきた。これまで在宅勤務を基本としていたが、そろそろ元の勤務形態に戻せる日が近付いている。

そこで社員に聞いてみた。「通常に戻ったら、週に何回出社にするのが良いと思う?手を挙げて」「1回、2回、3回、4回、5回」。誰も手を挙げない。恐る恐る「ゼロ」と言ったところ全員が手を挙げた。別のチームでも同じことを聞いたが、ほとんどがゼロという回答。

当社はコンサルティング会社という業務柄、在宅勤務が比較的馴染みやすいのか、週に1回以上出社したいと考えているのは1割程度ということが分かって驚愕した。

実は8月頃に同じ質問をした際には週2、3回出社との回答が多数を占めた。時間の経過とともに在宅勤務が習慣となったようだ。

ある心理学者が言ったという「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる」という言葉が頭に浮かぶ。

今回の場合、心が変わったのではなく環境が強制的に行動を変えたわけだが、通勤という習慣が変わってしまった。次は人格と運命か?

私はと言うと、会社支給のノートパソコンに自費で購入した大画面ディスプレイを付けて拡張すると作業効率が高まり仕事環境に問題はない。

当初、懸念されたコミュニケーションも朝のウェブ・ミーティングで顔を合わせておけば、大きな支障がないことも分かってきた。必要があれば、すぐにオンラインでミーティングができる。

さらに、これまで伝言ゲームになりやすかった顧客面談も、オンラインで関係者が一堂に会することで効率が上がったと感じている。在宅勤務だと通勤時間のみならず、出勤前の着替えや整髪といった準備時間、帰宅後の着替えといったことを考えると、毎日2時間ぐらいの時間の節約に繋がる。

結局、事務所に行って働くよりトータルで考えると在宅勤務の方が効率が良い。そうであれば「コロナ後に以前のような勤務形態を続けることは理にかなっているのか?」という疑問が生じる。今後どうするか。まだ明確な結論は出ていないが悩みどころだ。

在宅勤務が基本になれば、事務所スペースが広い会社では縮小の動きも出てくるだろう。通常、社員1人あたりのオフィススペースは7・5~10㎡とされている。一方、バンコク中心部のオフィス賃料は㎡あたり1000バーツ前後。つまり、1人あたり7500~1万バーツ程度の賃貸経費が毎月掛かっていることになる。

出社を半分以下にして、オフィス面積を半分にできたら大きな経費を浮かせることができる。固定費が減る分「通信費や電気代として月2000Bの手当を出す代わりに、今後の出社は週1~2回」という取引を社員との間で行えれば、皆がハッピーになる気もする。

そして、そうなった時に多くの人の運命が良い方向に変わると良いな、と思う 。

寄稿者プロフィール
  • 長谷場 純一郎 プロフィール写真
  • SBCS Co., Ltd.
    Manager, Business Promotion Division
    長谷場 純一郎

    奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、10年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。12年から18年までジェトロ・バンコク勤務。19年5月より現職。

SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。

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2021年9月〜11月  経済・政治関連トピック

経済

タイ中央銀行(BOT)は9月29日に開催した金融政策委員会(MPC)で、2021年の経済成長率予測を6月時点の前年比1.8%増から同0.7%増に引き下げた。22年の予測については6月時点から据え置き同3.9%増とした。21年第3四半期の経済は、新型コロナウイルス規制措置と輸出の減速に影響を受けたものの、足下では行動規制が緩和されつつあり、またワクチン接種も進んでいることから、年内から22年にかけては徐々に回復へと向かう見通し。

なお、アジア開発銀行(ADB)は同月22日に発表した「アジア経済見通し2021改訂版」で、タイの21年の経済成長率予測を4月時点の3.0%から0.8%へ、22年は4.5%から3.9%へと下方修正した。また、世界銀行も同月27日に発表した「東アジア・大洋州地域 半期経済報告書2021年10月版」において、タイの21年の経済成長率予測を4月時点の3.4%から1.0%へ、22年は4.7%から3.6%へと下方修正した。


10月12日、国際通貨基金(IMF)が「世界経済見通し」を発表し、21年および22年のタイの経済成長率予測について、それぞれ7月時点の同2.1%増、同6.1%増から、同1.0%増、同4.5%増へと下方修正した。IMFは、ワクチン接種の普及度合により、アジアの先進国と新興市場国・発展途上国の経済回復状況は乖離しつつあるとし、ワクチンを広く行き渡らせる政策の重要性を指摘した。

11月3日には、タイ工業連盟(FTI)、タイ商工会議所(TCC)、タイ銀行協会(TBA)の民間3団体から成る商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB)が、21年の経済成長率について前年比0.5~1.5%増との予測を発表。11月1日開始の63ヵ国・地域からのワクチン接種済み外国人旅行者への強制隔離免除や、国内規制緩和等によって経済活性化が見込まれることから、前月時点の同0.0~1.0%増から上方修正した。


盤谷日本人商工会議所(JCC)自動車部会総会の21年上半期報告によれば、同期における日系メーカーの生産実績は前年同期比56%増の76.6万台だった。内訳は国内向けが31.4万台(同45%増)、輸出向けが45.2万台(同64%増)。21年通年の生産計画台数は前年比30%増の168.8万台で、内訳は国内向けが70.1万台(同11%増)、輸出向けが98.7万台(同49%増)。ただし、新型コロナの流行、世界的な半導体不足が引続きリスク要因になるとしている。

また、21年通年の国内新車販売台数は75万台前後でおおむね前年並みである一方、輸出台数は99万台で2019年の水準に回復する見込みを示した。


タイ投資委員会(BOI)は9月6日、①温室効果ガス排出削減、②電気自動車(EV)生産、③新型コロナ対策に係る事業に対する新たな優遇措置を発表した。温室効果ガス排出削減については、環境負荷低減や持続可能な開発、政府が推進するBCG経済モデルの推進に資する投資への優遇措置を承認する。

具体的には低メタン放出性の稲作といった持続可能な農業開発、温室効果ガス排出量削減を目的とした設備への投資、自然冷媒を使用した冷蔵施設や冷蔵輸送業務への投資に3年間の法人税免除が、CCUS(二酸化炭素を回収・利用・貯蔵する技術)による石油化学施設や天然ガスの分離プラントに8年間の法人税免除が付与される。またタイをEV製造のハブに押し上げるための政策として、奨励措置を改定し全タイプのEV製造を優遇対象とした。対象には蓄電システム、充電モジュール、フロント・リア車軸モジュールで構成されるBEVプラットフォームも含まれる。

新型コロナが事業に与える影響を緩和させるための措置としては、21年4月1日から12月31日までにISO9002やCMMI等国際規格の認証取得を必要とする企業について、期限を6ヵ月延長する。また、国内でのワクチンや治療薬の開発・生産を促進するため、企業が公的研究機関等に財政支援する場合、支援規模に応じて法人税の優遇措置を最大3年間延長する。


タイ投資委員会(BOI)は10月11日、21年1~9月の投資申請統計を発表した。新規申請額は5,206.8億バーツで、前年同期比140%増となった。申請件数は同23%増の1,273件だった。業種別では電気・電子が最も多く772.1億バーツ、医療が592.1億バーツ、石油化学・化学品が367.6億バーツと続いた。海外直接投資(FDI)の新規申請額は、前年同期比220%増の3,720.7億バーツだった。国・地域別では、日本が678.2億バーツ(125件)で首位だった。米国の269.4億バーツ(31件)、シンガポールの268.8億バーツ(75件)、中国の237.1億バーツ(89件)が続いた。

政治

タイ政府は9月28日付の官報にて、公的債務残高の対GDP比上限を現行の60%から70%まで引き上げることを発表した。新型コロナに伴う経済対策費や国営事業に対する財源調達等のため、 21年9月末時点で公的債務残高は前年同月比19.0%増の9兆3,375億バーツ、対GDP比は58.0%となった。


タイ政府は11月1日より、日本を含む63の国・地域からの空路での入国者で、かつ入国時点でワクチン接種完了から14日間以上経過している入国者に対し、隔離免除措置の適用を開始した。ただし、タイ到着後に行うPCR検査結果判明まで政府指定ホテルで1泊する必要があるほか、引続き渡航前72時間以内に陰性証明書の取得等が求められる。

なお、入国者は渡航前に当該国・地域に連続して21日以上滞在している必要があるが、タイ在住者がタイに戻る場合この条件は適用されない。また、同日でタイ入国前に取得が必要だった入国許可証(COE)の登録受付は終了し、代わってThailand Passの登録受付が開始となった。

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