【連載第51回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

シーポム社編(7)
「翻弄される派遣」

(前回までのあらすじ)
〜メイさんの辞意をきっかけに派遣社員2名の投入を開始した。ところが、ちょっとした事がきっかけで派遣に対する割高的な声が聞こえたことと、結局残ることになったメイさんで現場をまわせる体制に戻ったこともあり、シーポム社の判断は…〜

「採用時の割高感」、それは限られた時間の中での採用活動に加え、常駐派遣というタイでは馴染みのないスタイルであったため、給与面で多少目をつぶっても、そういった条件をのむことのできる人に入ってもらわなければならない背景があった。

所属先は派遣元で勤務先が恒常的に派遣先の会社という形だと、縄張り意識が割と高いタイ社会において二の足を踏む候補者がいるのは仕方がない。≪※1≫

その影響がもろに出たのか、縄張り意識も手伝ってなのか、人事担当スタッフの割高感にかこつけた不信感。もちろん派遣スタッフがそれ以上のパフォーマンスを見せてくれれば良いのだが。

「メイさんもしばらくいることになったので、一旦引き取ってもらって良いでしょうか?」受入側のシーポム社の言葉だった。派遣のメリットとはそういうことだろう。期間が最初から曖昧だったこともあったが、こちらとしても受け入れざるを得ない状況だったので、やむなく自社に戻ってもらうこととなった。ただ、戻ってからすぐに別の会社でスポット派遣を2人に用意できたのは幸いだった。単純な修正仕訳をこなすプロジェクトで期間もゴールも決まっていたことがかえって良かった。こういった業務だと派遣本来の良さを提供できるとしみじみ実感した。≪※2≫

一方でシーポム社の業務も実は平行してスポット対応で継続していた。ジュニアスタッフが1名と手薄な状況は変わらないので、そのサポート的なことを常駐時にも対応していたラムさんがそのまま週に1日・2日のペースで対応していた。そういう形が一番良かったのかもしれないが、それもある日終わりを告げるのだ。

「メイさんが来月末でやはり辞めることになって、再びフォローしてもらって良いでしょうか?」MDの山雲さんから再びのSOSだ。これまでの経緯はともかく再度2人を完全常駐派遣することとした。ちょうど先のプロジェクトも終わってしばらくした頃で、リソースとして少し持て余し気味だったことも後押しした。

こうして第2次常駐派遣時代が始まった。メイさんも完全に退職し、多少の懸念はあったものの、お互いだいぶやりやすくなる。はずだったのだが、やはり…。 (続く)

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の変更等、脚色部分があります。

≪※1≫
社員旅行やNewYearPartyなど会社行事が就業規則に記載されることがあるように、社内イベントの充実は案外重要であり、そういった中に自社以外に所属するスタッフがいると想像すると分かりやすいと思う。このような福利厚生が充実している会社だと余計に自然と仲間意識を醸成する仕組みが出来上がり、かえって外部の人間に対しては縄張り意識のような感覚を目覚めさせるのかもしれない。そのため、派遣スタッフの身分としては福利厚生などは原則所属元の制度が適用されるものの、派遣先の会社のこういった行事関係についてもその都度気を使う必要が出てくるのである。
≪※2≫
通常タイで派遣を使う業務は、IT開発やBPOのサポートセンター的な内容が多く、期間が予め決まっていてワークロードもきっちり決まっているのが一般的だ。業務委託の1種でもあるだろうが、より業務内容やその定義が明確かつ特化したものが業務の発注元としても外注しやすいし、受ける側も受注しやすい。そのため、今回のような内部を立て直しながらまるまる経理部門を外注で受けるというのはかなりイレギュラーで、お互いに相応の信頼関係がないと成立すること自体が難しい。

Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke), Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表:日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadano@aporter.co.th
http://aporter.co.th/


但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。
本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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