ビジネス・経済 2019.07月号

プロフェッショナルの視点2 〜タイ現地法人で経営の質を向上させるための処方箋〜

企業経営とは所与の環境の下で適応を続けながら成長することである。タイにおける日系企業は、これまで相対的に安価な人件費の恩恵を受け、増え続ける業務量を人海戦術で対応していたが、世界的潮流のデジタル化により大きな潮目の変化を迎えていると感じている。

例えば、管理会計とそれを支える原価計算はコスト削減に必要な経営管理情報を提供するが、これらの情報を生成するITを含めた管理の仕組みと業務プロセスに課題を抱える企業は未だに多い。多額の標準原価差異が生じたり、予算実績分析に時間を要する等の問題が生じている場合、これらは原価計算の設計当初から業務が変更されていたり、日本本社の原価計算モデルをそのままタイで適用していることに起因することが多い。また、管理会計では日本本社への報告要件に合わせた予実分析を行う際に、老朽化した簡易システムとExcel等の表計算ソフトを駆使して対応しているが、元のデータに誤りが多く、分析よりも修正に手間をとられる等の生産性の低い作業に時間を費やす企業も珍しくない。いずれの場合も、効率的な業務遂行の仕組みづくりのための投資よりも、コストを抑えるための小さな改善に重きを置いてきた結果である。

そもそも、他国に比べると事業進出してから日が浅くないタイで、いまだに業務プロセス・ITの改善・高度化に着手できていない日系企業が多いのはなぜだろうか?

一つ目は、生産・販売量が継続的に拡大する環境下で業務の複雑化や人員拡大によるコスト逓増の影響に注意があまり向けられてこなかったことである。

二つ目は、までタイは安い労働力に優位性があり、必ずしも質を伴わないヒトの増員よりもプロセス・IT改善のための投資が費用対効果が限定的である等の理由で後回しにされていたことである。

三つ目は内製志向である。ヒトの質のばらつきが大きい環境下で、日常の業務管理に多忙な日本人管理者が大掛かりなプロジェクトを遂行するのは極めて難しい。そのため、プロジェクト規模が現状でできる範囲に集約されてしまうのである。まずはこれらの事実を理解したうえで、業務プロセス・ITの改善・高度化を通じて仕組みを再構築することが経営の質の向上へ向けた第一歩となると考える。

タイ企業でも定型的・反復的な作業をRPA(Robotic Process Automation)を活用してヒトの質のばらつきによる非効率を改善する取り組みや文字認識に特化したAI(Artificial Intelligence)で紙ベースの情報をデータ化してデジタル化へのデータ整備に取り組む企業が出てきている。

これまでは10年前に日本で実施した改善の取り組みをタイでも行うことで目先の課題は解決できていたが、世界的なデジタル化の波によりこの時差と情報格差は少なくなってきていることで、経営環境も大きく変わってきている。
タイ現地法人でも企業経営の本質は変わらない。IT技術を積極的に活用して業務プロセスの改善・高度化による生産性向上を飛躍的に進める時代が来たと言えそうだ。

世界四大会計事務所の一角を占めるKPMG。タイ事務所のコンサルティングサービスでは、経営の質を向上させる仕組みの再構築を業務・ITの両面から日本人・タイ人の混成チームで支援する体制を整えている。


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