2017.01月号

ミャンマーの最新ビジネス法務

第5回 新投資法の概要

第5回 新投資法の概要

はじめに

「外国投資法」及び「ミャンマー国民投資法」を一本化した、「新投資法(Myanmar Investment Law)」が2016年10月18日に成立しました。今回の改正は、外国投資法及びミャンマー国民投資法を単に一本化するだけでなく、すべての投資を提供対象として適用範囲を拡大、規制を明確化することにより、透明性の高い投資環境を整え、より投資を行い易い環境を整備することを目的としています。
主な改正点は、①MIC(ミャンマー投資委員会)の投資許可必要業種の変更、②土地長期賃借及び税制上の優遇措置と投資許可の非連動化、③外資規制の明確化、④投資家保護規定の増設などです。以下、この順に、改正の概要を説明します。

細則不透明のまま、2017年1月より新投資法が運用開始

MIC投資許可必要業種の変更

従来、土地長期賃借及び税制優遇措置を得るために必須であったMICの投資許可が、今回の改正により、①国家の戦略上重要な事業、②一定の資本金額を超える事業、③環境及び地域社会に深刻な影響を与える可能性のある事業、④別途政府により投資許可が必要とされる事業については必ず許可を得るべきことが明示的に規定され、それ以外の事業については不要とされました。一方で、これまでMIC投資許可と結びつけて許可されてきた、土地長期賃借及び税制優遇措置などについては、MICに対して認可を申し出ることで享受することができる仕組みに変更されました。

土地長期賃借及び税制上の優遇措置と投資許可の非連動化

土地の賃借について、従来は経済特区法適用企業を除き、MICの投資許可を得ていない外国会社については1年の土地賃借しか認められていませんでしたが、MICの投資許可を得ていない外国会社であっても、MICからの認可を得れば当初50年までの賃借、その後10年間の更新が2回まで認められることとなりました。
また、新投資法の下ではMICの投資許可を得ていなくとも、MICに税制優遇に関する認可の申出を行うことで税制優遇が認められます。税制優遇措置については、MICが通達により指定する投資促進分野に属する企業は、進出する地域ごとに異なる期間で所得税の免除が規定されています。所得税の免除期間は投資先の発展度合いにより異なり、最も発展していない地域の場合7年、中間地域の場合5年、最も発展している地域の場合3年の免除が規定されています。

外資規制の明確化と投資家保護規定の増設

新投資法では、MICが投資奨励分野及び投資禁止分野を定めることを規定し、禁止業種、投資が制限される場合並びに連邦政府及び議会への報告が必要とされる場合が明記されました。
さらに投資家保護規定が導入され、内国民待遇、最恵国待遇、公正及び平等取扱等の投資家保護のための諸規定、国際基準に沿う形での投資の収用条件の明記、MICによる紛争解決手続も整備されました。

おわりに

2016年11月16日付で発布されたMIC通知123/2016によれば、外国投資法に基づく申請は2016年12月31日で受付を終了し、2017年1月1日以降は新投資法に基づく申請のみを受け付ける旨が規定されています。しかし、現時点において新投資法の施行細則は制定されておらず、投資管理局長によれば、同施行細則は2017年3月末までに成立予定だとしています。したがって、2017年1月以降、同施行細則成立までは法令が不透明なまま新投資法の運用が開始され、混乱が生じる可能性があります。


堤 雄史(つつみ ゆうじ)
TNY国際法律事務所共同代表弁護士
東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。SAGA国際法律事務所(www.sagaasialaw.com)代表であり、2016年2月よりタイにTNY国際法律事務所(www.tny-legal.com)を設立した。タイ法及びミャンマー法関連の法律業務(契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。
問い合わせ先:yujit@tny-legal.com

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