ミャンマーの最新ビジネス法務

第3回 所有権及び賃借権規制の概要

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第3回 所有権及び賃借権規制の概要

はじめに

事業を営む上では、規模にかかわらず建物や土地を使用することになるため、不動産規制はいずれの業種にとっても重要です。特に製造業など、大規模な土地建物を使用する業種においては、十分にミャンマーにおける不動産法制を理解した上で事業を行う必要があります。不動産法制における主要な法律としては、1987年不動産譲渡制限法、1908年登記法、2012年外国投資法、2016年コンドミニアム法などが存在します。

“ミャンマーにおける不動産法制を理解した上で事業を行う必要がある”

不動産の所有権に関する規制

憲法上、国内のすべての土地の所有者は、国家である旨が規定されています。したがって、個人または会社に土地の所有権は認められていません。
しかしながら、国は自由土地保有地(freehold land)、許可地(permit land)、宗教許可地(religious grant land)などの使用を認めています。土地の種類に応じて、期限の定めなく使用が認められていたり、90年、60年などの形で使用権の期限が規定されている土地もありますが、後者の場合も原則、更新されることとなっています。かかる土地の使用権は、所有権とは異なるものの、賃借権とも異なるため、実務上かかる権利を所有権と称して取引がなされています。
不動産には、土地、建物、その他土地または土地に付着した物から生じる利益が含まれると定義されています。したがって、建物は土地の付着物として扱われ、原則として土地の所有者と建物の所有者は同一に帰します。
その上で、不動産譲渡制限法上、外国会社または外国人は売買、贈与、質、交換または譲渡のいずれの方法によっても、不動産を取得することはできないと規定されています。また実務上、会社法と同様に、1株でも株主に外国会社又は外国人が含まれている会社は外国会社として扱われます。
不動産の所有権取得規制の例外として、コンドミニアム法に基づき、外国人であってもコンドミニアムの所有権を取得できますが、現時点においては施行細則が規定されていないことから、いずれの建物が同法に基づくコンドミニアムに該当するかを判断することはできません。現在は、不動産業者が勝手にコンドミニアムと称している状態であることから、「コンドミニアム」であるからといって安易に購入することはリスクを伴います。

不動産の賃貸借に関する規制

不動産の賃貸借についてもミャンマー独自の規制が存在し、原則、外国人または外国会社に対して1年を超える賃借権は認められず、当該規制に違反した場合には罰則も科せられ得ます。
例外として、外国投資法に基づく投資許可を取得した場合、最大50年の土地賃借が認められ、10年の延長が2回まで認められます。また、経済特区法に基づく投資許可を取得した場合、最大50年の賃借が認められ、更に25年の延長が認めらています。
上記規制の関係上、長期の土地賃借が必要となる製造業、ホテル業などの事業においては事実上、外国投資法または経済特区法に基づく投資許可を得た上で事業を行わざるを得ません。

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堤 雄史(つつみ ゆうじ)
TNY国際法律事務所共同代表弁護士
東京大学法科大学院卒。SAGA国際法律事務所 (www.sagaasialaw.com)代表弁護士。2012年よりミャンマーに駐在しており、日本人弁護士では駐在期間が最も長い。2016年2月にはタイにTNY国際法律事務所(www.tny-legal.com)を設立し、契約書の作成、 M&A等を取り扱っている。
yujit@sagaasialaw.com

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